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文献概要
追悼
五ノ井哲朗博士を悼む
著者: 市川平三郎1
所属機関: 1国立がんセンター
ページ範囲:P.1099 - P.1099
文献購入ページに移動 われわれは,また,よき友,よき医師を1人失った.というより,私は,よき“人物”を1人失ったと言いたい.彼は,実に静かな,しかし大切なことを着実に実行して,確かな一里塚を築いたまれにみる“人物”というのにふさわしい人だったと信じるからである。
彼,五ノ井哲朗博士は,千葉大学で私と同期生である.戦後の一時期,気骨ある人は誰でもいくぶん左翼的であったが,彼もかなり熱心に活動していたようだ.しかし,先鋭的な学生たちが口角泡を飛ばして激論していても,彼はただ黙って,いつもの暖かい眼差しで,ニッコリと笑っているだけだ.彼は,問題を真正面から取り上げ,じっくりと理論的に考え,静かな一言で皆を納得させる妙な男だったという記憶がある.たぶん,彼はそのグループの論理的指導者であったのだろう.激しい論議のあと,彼の示すテレたような,なんとも言えぬ優しさを含んだ笑顔が今でも印象的だ.
彼,五ノ井哲朗博士は,千葉大学で私と同期生である.戦後の一時期,気骨ある人は誰でもいくぶん左翼的であったが,彼もかなり熱心に活動していたようだ.しかし,先鋭的な学生たちが口角泡を飛ばして激論していても,彼はただ黙って,いつもの暖かい眼差しで,ニッコリと笑っているだけだ.彼は,問題を真正面から取り上げ,じっくりと理論的に考え,静かな一言で皆を納得させる妙な男だったという記憶がある.たぶん,彼はそのグループの論理的指導者であったのだろう.激しい論議のあと,彼の示すテレたような,なんとも言えぬ優しさを含んだ笑顔が今でも印象的だ.
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