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文献詳細

雑誌文献

胃と腸29巻11号

1994年10月発行

今月の主題 大腸sm癌の細分類とその意義

主題

大腸腫瘍のpseudoinvasion―隆起型腫瘍と平坦型腫瘍

著者: 石黒信吾1 辻直子1

所属機関: 1大阪府立成人病センター病理検査科

ページ範囲:P.1130 - P.1131

文献概要

1.はじめに

 大腸腫瘍については各病理医間の癌診断基準の違いもあり,境界領域の腫瘍では,粘膜下に存在する成分が,良性腺腫が粘膜筋板を通過して粘膜下に侵入したものなのか,あるいは本質的に異型の弱い癌であって粘膜下に浸潤したのか,診断に苦慮する場合がある.

 本稿では,大腸腫瘍のpseudoinvasion(偽浸潤)を,良性腫瘍の腫瘍腺管の粘膜下への侵入と定義して考察する.

 癌の粘膜下への浸潤は大別して,粘膜筋板の破壊を伴う比較的大量の浸潤と,粘膜筋板の間隙を通じての腺管単位での粘膜下への浸潤があり,特殊な状況を除いては,消化管において非癌の上皮性の成分が粘膜下に存在することはない.

 この特殊な場合としては,先天的な形成異常(異所性膵,重複腸管など)と,後天的な粘膜下の異所性腺管などが挙げられる.このうち,粘膜下異所性腺管は,非腫瘍性の腺管が粘膜下にみられる現象であり,血管などが貫いている格子状の粘膜筋板の間隙が炎症などのために希薄あるいは間隙が拡大したために,増殖能を持つ細胞が粘膜筋板を通過し粘膜下で増殖し嚢胞状の腺管を形成するとされる.この現象は炎症性変化の強い胃ではよくみられる現象であり,大型で粘膜下腫瘍様の像を示すこともある.

 大腸においても,粘膜下の孤立リンパ小節の部分で,しばしば非腫瘍性の腺管が粘膜下にみられることがある.

 以上のごとく,消化管の粘膜筋板は格子状の形態を持つために,ある状況においては粘膜下に非腫瘍性の上皮成分が侵入することがまれではない.

 消化管における腫瘍の偽浸潤は,前述した事実を考え合わせると当然起こりうることであり,実際しばしば遭遇する.

 大腸においては,このpseudoinvasionを隆起型の腺腫の場合と平坦型の腺腫の場合に分けて考える必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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