今月の主題 大腸sm癌の細分類とその臨床
主題
早期大腸癌の深達度診断―内視鏡診断の立場から
著者:
横田敏弘1
松井孝志1
福田治彦1
横山正1
岡政志1
久居弘幸1
清水靖仁1
小野裕之1
斉藤大三1
小黒八七郎1
杉原健一2
森谷冝皓2
石川勉3
牛尾恭輔3
落合淳志4
下田忠和4
藤井隆広5
吉田茂昭5
所属機関:
1国立がんセンター中央病院内科
2国立がんセンター中央病院外科
3国立がんセンター中央病院放射線診断部
4国立がんセンター中央病院臨床検査部
5国立がんセンター東病院内科
ページ範囲:P.1261 - P.1269
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要旨 当院で1986年1月から1994年3月の間に切除された早期大腸癌は632病変(m癌483,sm癌149)である.これらのうち,内視鏡写真が良好で深達度の見直し診断が可能であったsm癌82病変とm癌84病変を対象とし,m,sm1,sm2以上の鑑別診断に有用な内視鏡所見の評価を行った.検討に際しては臨床経験が1年から8年までの5人の内視鏡医が,19項目の内視鏡所見について診断し,得られた成績を推計学的手法を用いて解析した.632病変の検討では,表面型を除き腫瘍の大きさや占居部位からsm2以上の癌を推測することは困難と思われた.内視鏡写真が良好な166病変の検討では,推計学的にsm2以上の癌に有意な所見として,有茎性では易出血性,内視鏡的硬さおよび腫瘍の崩れが,無茎性隆起では易出血性,分葉の欠如,内視鏡的硬さ,腫瘍の崩れ,緊満感およびびらん・潰瘍の合併が,また表面型では内視鏡的硬さ,緊満感,白斑,面状不整型陥凹および空気変形が挙げられた.これらのうち,色調,易出血性,分葉の欠如および白斑は,評価が容易で深達度診断指標として有用な所見と考えられた.また腫瘍の崩れ,内視鏡的硬さ,びらん・潰瘍,緊満感,およびひだの集中などの所見は,的確に評価することは困難であり,評価の客観化などについて今後更に検討すべきと思われた.