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文献詳細

雑誌文献

胃と腸29巻13号

1994年12月発行

文献概要

今月の主題 上部消化管病変の特徴からみた全身性疾患 主題症例 食道・胃・十二指腸に特徴的な所見を認めた全身性疾患

胃に多発性隆起性病変を認めた好酸球性胃腸炎の1例

著者: 垂石正樹1 斉藤裕輔1 蘆田知史1 野村昌史1 榮浪克也1 綾部時芳1 横田欽一1 柴田好1 坂田葉子2

所属機関: 1旭川医科大学第3内科 2旭川医科大学小児科

ページ範囲:P.1451 - P.1456

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要旨 患者は13歳,男児.4歳から鉄欠乏性貧血,5歳から腹痛,下痢がみられ,当院小児科で低蛋白血症,低グロブリン血症,好酸球増多症およびIgE異常高値を指摘された.食物抗原に対する著明なアレルギーが認められ,抗アレルギー剤の投与と抗原除去食で経過をみていたが,コントロール不良のため消化管精査の目的で当科を紹介された.上部消化管内視鏡検査で,胃前庭部に縦に並ぶverrucosa様の隆起性病変を認め,同部位からの生検組織で好酸球の浸潤がみられた.大腸内視鏡検査では,粘膜の発赤と浮腫性変化がみられ,生検組織では同様に好酸球の浸潤を認めた.小腸X線検査では明らかな異常はみられなかった.以上の所見から,食物アレルギーに基づく好酸球性胃腸炎と診断し,食物抗原除去を目的に成分栄養による経腸栄養療法を導入した.約40日の完全経腸栄養により,末梢血好酸球は著明に減少し,体重,血清総蛋白は改善した.その後,抗原除去食を併用した在宅経腸栄養療法で経過をみているが,経過は順調で10か月後の上部消化管内視鏡検査では胃病変の改善が認められた.好酸球性胃腸炎は高頻度に胃病変がみられるが,本症例のような形態はまれである.また,食物アレルギーが明らかな例には経腸栄養療法は試みるべき治療法と考えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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