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文献詳細

雑誌文献

胃と腸29巻3号

1994年02月発行

特集 早期大腸癌1994

ノート

早期大腸癌と分子生物学

著者: 馬場正三1 丸山敬二1 小里俊幸1

所属機関: 1浜松医科大学第2外科

ページ範囲:P.167 - P.169

文献概要

1.はじめに

 早期大腸癌の“早期”という言葉は,本来chronologica1な要素を含んだ言葉であるが,一般大腸癌においてinitiationの時点を知るすべがないため,深達度(m,sm)で置き換えられて定義されている.

 最近の分子生物学の進歩により癌遺伝子,癌抑制遺伝子が次々と発見されるに及び,疫学というマクロな分析から発した作業仮説が現実のものとなりつつある.

 多段階発癌では時間の経過と共に遺伝子変化が蓄積され,ある段階で発癌すると考えられる.宇都宮ら1)は日本人では5つのgenetic eventで大腸癌が発生すると報告しており,Vogelsteinら2)は発癌のシナリオとして有名なモデルを提唱している.

 大腸癌の組織発生に関しては,adenoma-carcinoma sequence説と,de novo cancer説があり,前者のGrinnell(1958),Morson(1972)と,後者のSpratt,Ackerman(1958)の論争は古くて新しい問題として現在まで続いている.すなわち大腸癌の多段階発生が有力となってもなおde-novo癌のgenetic pathwayが証明されておらず,今後の解明を待たなければならない.

 本稿において,われわれは家族性大腸腺腫症(FAP)を中心に腺腫症の組織発生を研究してきたので,その一部を紹介する.また,1991年に日米共同研究(中村,Vogelstein,宇都宮,馬場)によりAPC遺伝子を同定することができたのでadenoma-carcinoma sequenceにおけるその関与についても述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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