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今月の主題 食道粘膜癌―新しい病型分類とその診断
主題
文献概要
要旨 食道のm癌135個(m癌患者は28例,他は進行癌例に随伴)とsm癌46個(sm癌患者45例)を,その深達度から,m1,m2,m3と,sm1,sm2,sm3に亜分類して,各深達度別に脈管侵襲率・リンパ節転移率・肉眼的特徴を比較検討した.この比較検討を,m癌では膨張発育型と浸潤発育型とにも分けて行った.そして,食道扁平上皮m癌が深達度別で,どのような肉眼的特徴や予後危険因子を有しているかを分析した.m1癌,m2癌はすべてly(-),v(-),n(-)であったが,m3癌7症例(13病巣)中,ly(+)が1症例(14.3%),1病巣(7.7%)に,v(+)が別の1症例(14.3%),1病巣(7.7%)にみられた.ly(+),v(+)はm3癌病巣のうち,膨張発育型(0/5)になく,浸潤発育型の25%(2/8)にみられた.肉眼型別にみた深達度は0-Ⅰ型の97%(28/29),0-Ⅲ型の100%(2/2)がsm癌で,0-Ⅱb型の66個すべてがm癌であった.0-Ⅱa型の73%(30/41),0-Ⅱc型の88%(38/43)がm癌で,m3癌は0-Ⅱa型の12%(5/41),0-Ⅱc型の19%(8/43)であった.ly(+)は0-Ⅱc型の1個に,v(+)は0-Ⅱa型の1個に認められた.純粋型0-Ⅱa型や0-Ⅱc型では大きさ(最大32mmまで)とsm浸潤率との間に相関はなかったが,0-Ⅱa+Ⅱb,0-Ⅱc+Ⅱb,0-Ⅱa+Ⅱc+Ⅱbの複合型ではⅡa部分が5mmより大になると,0-Ⅱc部分に比べて,有意にsm癌率が増加した.m1癌・m2癌とm3癌,また,m癌とsm2癌・sm3癌では肉眼像を異にしたが,m3癌とsm1癌では同じであった.m3癌の膨張型と浸潤型の肉眼的区別は困難であった.食道m癌の内視鏡的切除はm1癌,m2癌のすべてが適応となり,m3癌でも膨張発育型癌はその適応となると考えられた.m癌と術前診断されたものは内視鏡的切除,その後,組織検査でlyやvの有無,浸潤様式,癌の組織型や細胞異型度を詳細に分析すれば,この結果によって次のステップが選択できる.
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