今月の主題 食道粘膜癌―新しい病型分類とその診断
主題
食道粘膜内癌のX線診断
著者:
馬場保昌1
加来幸生1
坂田祐之1
冨松久信12
清水宏1
武本憲重1
竹腰隆男1
亀尾紳一13
白地哲13
立石秀夫13
松原敏樹4
植田守4
加藤洋5
柳沢昭夫5
所属機関:
1癌研究会附属病院内科
2早期胃がん検診協会中央診療所
3久留米大学医学部第2内科
4癌研究会附属病院外科
5癌研究会附属病院研究所病理
ページ範囲:P.301 - P.317
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要旨 1978年から1993年4月までに癌研外科で切除された食道表在癌102例のうち,組織学的に粘膜内癌(m癌)と診断された24例を対象に,組織学的に深達度の細分類を行い,X線所見を検討した.m癌の深達度の分類と定義は,ep:間質内浸潤が認められないもの,m1:間質内浸潤が粘膜固有層(lpm)の上1/2にとどまっているもの,m2:lpmの下1/2に及んでいるが粘膜筋板(mm)に達していないもの,m3:粘膜筋板内(mm)にとどまるもの,と4つに分類した.X線所見をまとめると以下のごとくである.ep癌は境界不明瞭な淡い陰影斑で,壁変化所見はほとんどないか,あってもごく軽度である.m1癌は大きさ,壁変化所見ではep癌に近く,陰影斑に濃淡の差がある点ではm2に類似している.m2癌は壁変化所見,病変の境界所見の頻度ではep~m1癌とm3癌の中間的態度を示すが,陰影斑の所見はむしろm3癌に近い.m3癌は陰影斑はm2に類似し,病変境界や壁変化所見は明瞭で,むしろ軽度なsm浸潤癌との鑑別が必要である.X線診断の立場からは,m癌の深達度はm1癌をep癌として取り扱い,m1,m2,m3の3つに細分類することが実際的であると思われた.