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文献詳細

雑誌文献

胃と腸29巻7号

1994年06月発行

文献概要

今月の主題 多発胃癌 主題

多発早期胃癌の臨床病理学的検討―外科的立場から

著者: 磨伊正義1 源利成1 伊藤透1 藤岡央1 大井章史1 溝口雅之1 野村英弘1 高木サユリ1 高橋豊1 北村徳治2

所属機関: 1金沢大学がん研究所外科 2北村クリニック

ページ範囲:P.691 - P.700

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要旨 当外科開設以来17年6か月間に切除された早期胃癌428例のうち,同時性多発癌は57例(13.3%),147病変であった.年齢および性別では単発早期胃癌の平均年齢が57.4歳であったのに対し,多発癌では62.8歳で,男女比は5.3:1と高齢者男性に圧倒的に多くみられた.肉眼型はⅡcを主体とした陥凹型が73病変(49.7%)を占め,Ⅱb型34病変(23.1%),隆起型が40病変(27.2%)となり,陥凹・平坦型で72.8%を占めている.その組み合わせは陥凹性病変では陥凹型同士の組み合わせが51.4%にみられたが,隆起性病変では隆起型との併存は35.0%で残りは陥凹型と平坦型の組み合わせであった.これは,胃全割標本による組織学的検索により術前指摘しえなかった微小多発癌巣が多いことに起因している.一方,主病巣と副病巣の位置関係をみると噴門側に副病巣が存在する頻度は43.8%もあり,術前の噴門側粘膜の十分な精査が必要となる.また,腺領域別には胃底腺領域に発生した未分化型腺癌はわずか2病変にしかすぎず,分化型,未分化型癌とも,そのほとんどは萎縮領域を幽門腺領域に発生していた.これら多発早期胃癌の背景粘膜をみると,まず単発の分化型腺癌症例ではびまん広範腸上皮化生粘膜が48.9%であったのに対し,多発癌では80%までが高度かつ密な腸上皮化生粘膜を背景病変としていた.更に多発胃癌は腺腫を併存している頻度が高く,14.3%に腺腫を合併していた.以上の事実から,高齢者,男性で高度の腸上皮化生を伴った萎縮粘膜のみられる胃では,多発胃癌の可能性を念頭に置いての臨床対応が必要と言える.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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