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文献詳細

雑誌文献

胃と腸29巻9号

1994年08月発行

今月の主題 食道のヨード不染帯

主題症例

4年10か月間内視鏡的に経過観察をしえた食道粘膜癌の1例

著者: 長浜隆司12 北野伸浩13 松下郁男14 八巻悟郎1 仲谷弘明1 工藤卓也1 大川信彦1 志賀俊明1 野本一夫1 大倉康男1 西沢護1 細井董三5

所属機関: 1東京都がん検診センター消化器科 2鹿児島大学医学部第2内科 3熊本大学医学部第2外科 4熊本大学医学部第2内科 5多摩がん検診センター消化器科

ページ範囲:P.951 - P.955

文献概要

要旨 患者は73歳,男性.1987年4月,検診目的で当センターを受診.上部消化管内視鏡検査で上切歯列から30~35cm部位にヨード不染帯を認め,以後2か月後,3か月後,6か月後,8か月後,1年2か月後,1年8か月後,2年7か月後に経過観察を行ったが,いずれも食道炎あるいは異型上皮巣の生検診断であった.初回検査から4年10か月後の生検で扁平上皮癌の診断が得られ,手術が施行された.病理組織学的検索で,大きさ3.0×2.5cmの0-Ⅱc+Ⅱb型と大きさ0.5×0.3cmの0-Ⅱb型の多発癌であり,いずれも深達度m1,ly0,v0,n0の高分化型扁平上皮癌であった.主病変の組織像は癌巣の大部分が正常上皮に覆われて食道上皮の下半層に認められ,乳頭状下方進展のほとんどない異型度の比較的低いものであった.また,生検組織診断の見直しでは,初回からほぼ同様な組織異型所見であり,上皮内癌の経過観察例と言えた.このような症例の場合,生検組織診断では食道炎あるいは異型上皮巣との鑑別が難しいことが多く,経過観察されることが多いが,臨床診断にはヨード染色が非常に有用であり,ヨード不染帯の拡がり,形態変化を注意深く観察する必要があると考えられた.一般に食道癌は発育進展が速いと言われているが,内視鏡的なretrospectiveな経過観察において,m癌の発育進展が比較的緩徐な例が存在することが明らかとなった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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