文献詳細
今月の主題 直視下診断法
綜説
直視下胃生検
著者: 春日井達造1 加藤久1 伊東瑛吉1 坪内実1 八木幹郎1 山岡康孝1 吉井由利1 服部外志之1 内藤靖夫1 小林航三1 須知泰山2
所属機関: 1愛知県がんセンター病院第一内科 2愛知県がんセンター病院臨床検査部
ページ範囲:P.1211 - P.1226
文献概要
胃生検は古くは胃液吸引の際得られた胃粘膜小片の観察を行ったEinhorn(1894年)に始まるというが,本格的な生検は1940年Wolf-Schindlerの軟性胃鏡を応用したKenamore1)の直視下生検が嚆矢と云える.KenamoreはWolf-Schindlerの軟性胃鏡に生検用の鉗子を装置して直視下に胃生検を実施する方法を考案した,今日各種の生検用ファイバースコープが開発されているが,いずれも28年前のこのアイデアを拝借しているわけである.
ついで1948年Benedict2)はWolf-Schindlerの軟性胃鏡に改良を加えて胃内分泌液の吸引と生検採取を同じchannelから行えるOperating Gastroscopeを開発した.その後本器もしくは本器のmodificationが欧米並びに我が国に於ても使用されて来た.
一方Tomenius3)はWolf-Schindlerの軟性胃鏡の尖端に吸引生検器を装着した装置を考案し直視下の吸引生検を試み,Debrayら4)はaspiration-sectionの原理に基づく新型のdirect-vision biopsy gastroscopeを開発した(1962年).
我が国に於てもBenedictの改良型とも云うべき武井式軟性生検用胃鏡(常岡),硬性胃鏡を用いた川島式生検用胃鏡(川島,稲葉)及び順天堂式生検用胃鏡(信田)5)等が開発され,一部において使用された.しかしこれ等胃鏡を用いた胃生検の重要性には誰も異論がなかったが,その手技に熟練を要し,又患者に与える負担も大きく,その割に成績も余り良くなかったので一部の胃鏡学者の研究的或いは臨床的使用にとどまり一般臨床に広く利用されるまでには至らなかった.
しかるに1958年Hirschowitzら6)によりファイバースコープが開発され,これが胃内視鏡として広く利用されるに至り,ファイバーガストロスコープを用いた直視下生検法が開発され7)~10),ファイバーガストロスコープによる胃癌の生検診断が器械の改良と手技の進歩により臨床的に可能となり10)~16),更にX線,内視鏡,細胞診と並んで胃癌診断の為のルーチン検査法の一つとなった17).
本稿においては最近その重要性が注目されて来たファイバーガストロスコープによる胃癌の生検診断を中心にのべる.
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