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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻10号

1968年09月発行

今月の主題 直視下診断法

展望

腹部臓器の動脈撮影

著者: 田坂晧1

所属機関: 1東京大学医学部放射線科

ページ範囲:P.1239 - P.1248

文献概要

Ⅰ.はじめに

 腹部臓器の動脈撮影は,最近数年の間に,臨床診断の中に新しくもち込まれたX線検査法であるといえる.脳や四肢など古くから動脈撮影が実用されている部位について考えればすぐわかるように,動脈撮影は動脈瘤や動脈の閉塞など動脈自身の病変について具体的な情報をあたえることと,髄膜腫の診断のように血管系におこっている二次的な変化から腫瘍の存在部位やそれの性質を知るための資料を提供することの2つの大きな役割を通常もっている.腹部臓器についても動脈撮影のもつ役割は全く同じであるが,診断上の価値はそれぞれの臓器についてはほかの検査法(とくにX線検査法)のもつ能力などにより相対的に左右されることになる.腹部臓器の動脈撮影がどのようにして行なわれているか,どんな疾患の診断に役立つと考えているかを一通り展望をしてみることにする.

 腹部臓器の動脈撮影はカテーテルを使う選択的血管撮影といわれる方法で行なわれている.通常は大腿動脈から先端部をあらかじめ屈曲して型をつけておいたカテーテルをSeldinger1)が考案した経皮カテーテル法にしたがって動脈内に挿入し,X線テレビ透視により腹部大動脈に進めて目的の分枝に先端を入れ造影をする.腹腔動脈,上腸間膜動脈,下腸間膜動脈,腎動脈,下横隔動脈,副腎動脈,腰動脈などの選択的撮影ができる.もっとも頻度が多く実施されるのは腎動脈であり,腎腫瘍と腎囊胞の鑑別診断,腎動脈狭窄の判断など多くの腎疾患の診断に役立って診断的価値が高いが,腎動脈についてはこの展望では除くことにする.

 腹腔動脈の選択的撮影についてはÖdman2)(1958)がはじめて比較的多くの症例に基づく報告をした.肝,脾,膵などの診断に役に立つ可能性がこれにより示され,多数の臨床例についての検討が実施されるきっかけとなった3)~5).上腸間膜動脈6)および下腸間膜動脈7)の選択的撮影では小腸および大腸の腫瘍や炎症性疾患の診断への寄与が期待されてはじめられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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