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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻11号

1968年10月発行

文献概要

今月の主題 食道 綜説

食道癌の治療法

著者: 中山恒明1 羽生富士夫1

所属機関: 1東京女子医科大学消化器病センター

ページ範囲:P.1369 - P.1376

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Ⅰ.はじめに

 食道癌の治療には種々の困難性があるにもかかわらず,最近はいたるところでこれが行なわれるようになったことは喜ばしい限りである.しかしながら胃癌における目覚ましい診断技術の進歩と切除手術の普及による治療成績の向上に比すれば,食道癌治療の道は今なお険しいものがある.われわれは,昭和21年来,5,000余例の食道癌患者を診療する機会に恵まれ,現在迄あらゆる機会に治療上の諸問題とその対策について発表してきたが,今回はその経験をもとにして,食道癌治療の綜説を試みたいと思う.赤倉教授の集計によれば本邦60施設の総症例数は,11,601例,切除例数は,5,227例,切除率46%,他はすべて姑息的治療に終っている.またその切除手術死亡率も15.6%という平均値となっている.われわれが昭和21年から昭和42年にいたる約21年間に診療した食道癌患者総数は,5,435例であり,その内入院治療総数3,563例65.55%であり,その内切除手術の対象となったのは2,178例40.7%に過ぎず,他はすべて姑息的治療である.われわれは,元来,癌腫に対しては,積極的切除手術をもって最良の治療法として今日に至っているのであるが,これらの成績は一つの限界を示すものといえる.特に古い千葉大学時代の統計と最近の東京女子医大消化器病センターにおける統計とを比較してみても,その切除率に差をみいだすことができない.このことは,食道癌治療の上の大きな壁,即ち食道癌患者は高齢者が多いこと,食物の通過障碍からくる低栄養状態,手術そのものの複雑さ等が関連するばかりでなく,それにもまして早期発見の方策が確立していないという感を深くする.食道癌患者は現在でもかなり進行癌の状態ではじめて診断治療されているといえる.ただ一筋の光明は極く最近の1・2年われわれの4例を含めて十数例の早期食道癌が諸々の施設から相次いで報告されだしたことである(第1,2表).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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