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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻13号

1968年12月発行

今月の主題 陥凹性早期胃癌の経過

綜説

胃癌病巣内潰瘍の消長

著者: 堀之内幸士1 古賀安彦1 岡部治弥1

所属機関: 1九州大学医学部勝木内科

ページ範囲:P.1673 - P.1682

文献概要

Ⅰ.はじめに

 胃癌病巣内潰瘍は従来縮小しないのが常識で,まれに縮小することがあってもその縮小率は50%を越えることはないとされ1),これが潰瘍の良悪性判定に際してのかなり有力なてがかりとなっていた.しかしながら,近年わが国における胃診断学のめざましい進歩により,数多くの早期胃癌が臨床のレベルで発見されるに至り,潰瘍の縮小もしくは消失を示す胃癌症例も少なからず報告されるようになってきた.そしてこのような報告は,臨床的にtrial treatmentに対する警鐘として注目をあびる一方,胃潰瘍癌判定基準をめぐる論争にも新たな問題を提起し,昭和40年,村上教授の“潰瘍癌における悪性サイクル説”をもたらしたことは周知のごとくである,われわれは昭和40年3月,第7回日本内視鏡学会総会の席上,“悪性潰瘍の表面変化”と題して2),われわれの経験した第1例の胃癌病巣内潰瘍縮小例を報告したが,以来昭和42年12月末日までにかかる例を15例経験している.いずれも確かな臨床データを備えたもので,かつ切除胃の詳細な病理組織学的検索をなし得たものである.ここではこれら各例の術前の経過と切除胃の組織像の検索とを併せ行ない,各例がたどったと思われる術前の経過を推定し,更にこのような潰瘍縮小を示す胃癌症例の頻度について2~3の考察を行なってみる.

 なお,これらの症例は,われわれが昭和38年より行なっているところの,胃癌患者の過去の検査資料を遡って集めるという方法で,結果的にその経過を観察し得た症例および良性潰瘍と診断して,経過観察中に癌と判明し胃切除を行なつた例とからなっており,当然のことながら,癌と確診後故意にその経過をみるごときことは行なってないことをあらかじめ断っておく.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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