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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻13号

1968年12月発行

今月の主題 陥凹性早期胃癌の経過

展望

胃潰瘍の薬物療法

著者: 近藤台五郎1 竹本忠良1 市岡四象1

所属機関: 1東京女子医科大学消化器病センター

ページ範囲:P.1693 - P.1698

文献概要

Ⅰ.はじめに

 胃潰瘍の治療を内科的に行なうか,外科的療法によるべきかは永い間の論点であり,なお未解決の問題である.

 一つにはその治療法に対する根本的な概念の相違があり,またそれぞれの取扱っている症例の違いもあって厳密な意味での結論にはなかなか到達しない.

 山岸1)は現在の内科医の考え方を痛烈に批判し,“難治性”という言葉自体に問題があり,多くの内科医が3カ月または4カ月間を観察期間としているが,このような長期間にわたって内科的療法が厳守しうるか否か疑問であるとのべ,さらに内科的療法とは一体どういうものかよく分からないものがあるとし,観察期間を短縮して手術適応範囲を大幅に拡大すべきだといっている.

 また大井2)は有名な二重規制機構学説をもとにして局所性発生因子を対象とした内科治療には大きな期待はおけないことを強調している.

 一方,常岡ら3)は潰瘍発生直後から理想的に治療が行なわれるとすれば,そのほとんどすべては治しうる病変であると考え,内科的治療をさまたげるような合併症のないものに対しては外科的な切除治療を行なう方がよいという理由はないとのべている.

 現実に何例かの症例は潰瘍治癒後5年以上の経過観察で全く再発をみていないし,1カ月以内の短期間に治癒する急性潰瘍が存在することは事実である.

 反面1年間毎日服薬しながら,穿孔を来して緊急手術を行なった症例も経験している.

 胃潰瘍の成因は多岐にわたりいくつかの因子がほぼ同時に働いて胃粘膜に炎症を起し,血管の変調を起して二次的に潰瘍が発生するものと考えられている4)

 従ってこれらの原因をすべて除去することは到底不可能であり,原因の除去のみで治療目的が達成されるものでもない.

 このような観点からすれば,胃潰瘍の治療法も結局,case by caseで考えていかねばならないと思うし,誰しも現在行なわれている薬物療法に決して満足しているものではない.

 このようなことを考えながら,従来の胃潰瘍に対する薬物療法を顧みるとともに最近開発された2,3の薬剤と最近の治療法に対する考え方を紹介してみたいと思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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