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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻4号

1968年04月発行

文献概要

技術解説

私の胃レントゲン検査

著者: 木村規矩志1

所属機関: 1呉市木村胃腸病院

ページ範囲:P.485 - P.487

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Ⅰ.はじめに

 胃の診断は先づレントゲン検査が最初の手がかりとなるので,そのフィルム像は適確に読み易い様に撮影することである.然し症例によっては病変の現われる像がいろいろと違うという点を理解せねばならない.

 このようなことを考えると臨床医の診断面における位置は重にしてかっ大である.その責任を果すためには最も使い易い精密なレントゲン装置が必要である.そして,自分なりに見落し,見誤りを少くする撮影の基本方式を考え,レントゲン障害と疲労を軽減する様に努めねばならぬ.

 従来,一般に使用されているレントゲン装置でレントゲン障害を受けることなく,毎日透視撮影出来る限界はせいぜい7~8名程度のものではないかと考えている.10名以上になると私の経験では頭痛,眩量,時には嘔吐を催すことがあるので,これ等の悪条件を克服し,1人1人出来る限りの患者をこなし満足し得る診断能力を発揮するためにはX線テレビジョン方式を採用することが最も理想的と思う.

 しかし,X線テレビにも利点,欠点はあるけれども,利点を生かして,欠点を少くすることが必要で,その意味で私の病院は現在胃腸検査を主体としたオーバーチューブ方式(透視台を水平にしたときに被検者に対してX線管球が上にある)で島津製作のLs-3型の11吋イメージの遠隔操作装置を使用している.

 なお,X線テレビ装置のイメージ分配器より16mmX線映画撮影およびフィリップスの70mmスポット撮影装置を組合せている.

 仭て,レ線診断を行うにあたり,その一般的な方法についてはすでに多くの成書に述べられているので,私は,どの様に透視撮影すればよい診断効果が上るかの問題を中心に考えてみたい.今日なお,胃の形態を充分知ることが不可能な従来の解像力の悪るい螢光板を用いたX線装置で,いまだに習慣的と云おうか,透視検査の重要であると云う観念から抜ききれない様である.その上,透視検査に長時間かけると医師および被検者にレントゲン障害を起こさす危険ともなるので写真撮影に重点を置くべきである,写真撮影によって得られた像は透視像より鮮明さの点では遙かに優れたものがある.従って写真撮影にある程度の工夫を加えたならば透視では得られない診断の確率性が可能となる.

 ひるがえってX線テレビ方式では透視解像力は従来の螢光板透視に較べて圧倒的に輝度が優れており明るい室内で業務を行うことが出来,これらの悪条件を全部カバーして呉れる.一般に広く行われているX線撮影技術は充盈像を主とした透視触診,圧迫撮影の基本方式が用いられている.しかし,青山博士は粘膜レリーフ像について胃充盈像の撮影は容易であるが,充盈像のみの診断はしばしば誤診を招くので,粘膜像併用の重要性を力説している.ことにmm単位の病変を発見するには是非とも微細粘膜レリーフ像が絶対必要であるが,これはうまく撮れる様な技術を平生養って置くことが重要であると述べている.これについてあるX線学者は通常行われている1ロバリウム(約30cc)を飲ませて撮影するところのいわゆるレリーフ像に現われた所見は充盈,半充盈による透視後の適宜の圧迫像でも現わし得るので,今更単純レリーフ像より圧迫像の方が補助的診断価値は高いと述べている.

 私は胃微細病変の決め手には,何をさておいても先ず胃のレリーフ像の撮影を是非入れたいと考えている.胃の充満像による胃の辺縁の変形に注意することは,最も必要なことであるけれども,素直な充満像すら満足に撮れない場合が非常に多い.

 大体,胃のレ線像と云うものは誰が撮一,ても同じ像が得られるとは限らないので,非常に個人差があるけれども,自分にも読み易くかつ他人にも読ませ易い写真撮影をしなければならない.そこで私はどのようにすれば良い診断成果が上るかの問題点を中心として,その方針と心構えを述べてみたいと思う.ここで胃X線診断には粘膜像がよいか,充盈像がよいかの論議は後日にゆずり,今迄の各種撮影方の利点,弱点をよく見極めて誰が行なっても比較的同様な写真が撮れる様な方法を考えてみたい.

 勿論,特殊撮影法には高度の撮影技術を持った人によって初めて精度の高い結果が得られることになり,問題は仲々むずかしいと思う,保険経済の観点からもある程度の限られたフィルム枚数で最大の効果の診断価値を発揮する様な能率のよい組合わせが是非とも心要であることは云うまでもない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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