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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻5号

1968年05月発行

文献概要

技術解説

巨大皺襞のX線診断

著者: 山田達哉1

所属機関: 1国立がんセンター放射線科

ページ範囲:P.611 - P.619

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Ⅰ.はじめに

 巨大皺襞,giant rugaeあるいはgiant foldなどの言葉は,臨床的にしばしば慣用されているが,何れも肉眼的所見で胃の粘膜皺襞が著るしく巨大であることを言い現わしたものであって,内容的には同じものと考えられる.従って,単に“巨大皺襞”と云う場合には,良性のものもあろうし,悪性のものも含まれよう.しかし,“いわゆる巨大皺襞”とか,あるいは“これはgiantfoldだよ”と云った場合には,多分に良性のニュアンスが含まれているように思われる.なお1965年版のSchinzの教科書(英文版)の中でFrik1)は,“giant rugae”と云う項目を挙げ,先天性の良性疾患と云うニュアンスで説明し,癌との鑑別が困難なことを述べている.

 このように,用語の使い方はなかなか難かしいものである.そこで,いくらかでも混乱を少くするためには,良性の巨大皺襞を,青山2),高木3)の云うように,“巨大皺襞症”とした方がよいように思われる.

 巨大皺襞症は,1888年Menetrierがpolyadenome en nappeとして記載したのが,始まりだと云われている4).主として胃体部大彎を中心に,その前後壁の粘膜皺襞が著るしく巨大になる良性の疾患であり,組織学的には,胃腺が単に肥厚している場合と,表面および腺窩上皮細胞の過形成による揚合とがあると云われている.なお臨床的に,低蛋白血症を伴う場合が多いとも云われている.多数の同義語があり,Bockusの教科書5)をみると,まず表題は,giant hypertrophy of the gastric mucosaであり,その他にMénétrier's disease,giant hypertrophic gastritis,giant rugal hypertrophy,polypoid swelling of the gastric mucous membrane,adenopapillomatosis gastrica,gastritis hypertrophica gigantea,massive hypertrophic gastritis,hypertrophic bulbous gastritisなどを挙げている.

 さて,われわれにとっで臨床的に大切なことは,目の前にある“巨大皺襞”が,良性なのか?悪性なのか?と云うことであろう.そこで,これから述べる“巨大皺襞の出し方”では,“巨大皺襞”には良性も悪性もあることを考慮して,先づわれわれが経験した巨大皺襞症および巨大皺襞を呈した疾患(胃癌および胃悪性リンパ腫)の数症例について,そのX線像を例示し,次でそれらのX線像を中心に技術解説を行なってみたいと思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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