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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻7号

1968年06月発行

文献概要

今月の主題 胃癌の発生 綜説

マウスの胃癌

著者: 森和雄1

所属機関: 1昭和大学医学部癌研究所

ページ範囲:P.799 - P.806

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Ⅰ.まえがき

 マウスあるいはラットの胃癌を生成しようとする試みは,過去20年以上に亘って多くの癌研究者,ことにアメリカNIHのStewartらを中心とする学派15)によって大きな努力がなされた.ところが,周知のように,マウスやラットの胃は堤状の隆起limiting ridgeによって判然と前後2室に分かれている.食道に直接つながる部分は前胃とよばれ,食物の貯ぞうの役をし,胃全体の2/3を占め,扁平上皮組織でうらうちされている.これに対し,のこりの部分は後胃とよばれ,これは人の胃に相当する部分であり,胃腺や幽門腺をそなえていて,ペプシンや塩酸を分泌して食物の消化にあたり,幽門部を経て,十二指腸に連なっている.

 マウスやラットを用いての実験で,胃の病変を取扱う場合には,その病変の発生母地が前胃であるか,あるいはまた後胃に属するものであるかを充分見究めてからかからねばならない.それは,前述のように前後胃の成立ちが組織学的にそれぞれ異なるからである.すなわち,前胃に発生したものは,扁平上皮癌が主であって,これらは皮膚,口唇あるいは食道にしばしばみられる癌と同様であるからである.一方腺胃に生ずる腫瘍は,腺癌が主であるが,時には,肉腫が含まれることがある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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