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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻7号

1968年06月発行

技術解説

胃前壁のうつし方

著者: 熊倉賢二1 丸山雅一1 染矢内記1

所属機関: 1癌研究会附属病院内科

ページ範囲:P.873 - P.882

文献概要

Ⅰ.はじめに

 胃の主なX線検査法には,充盈法,二重造影法,粘膜法,圧迫法の4つがある.これらのX線検査法の利点を存分にのばし,弱点をよく理解したうえで,胃全体をくまなく写真に現わすためには,各種の検査法をどのように組み合わせたらよいのであろうか.このような,各種のX線検査法の検討1)2),および,X線検査体系の検討が地道に行なわれたので,近年,わが国では,胃のX線診断は急速に進歩し,早期胃癌も確実に診断できるようになった3)4)5).このX線診断領域の進歩のうち,特筆すべきものは,二重造影法の開発であろう.文献を詳細に検討すれば異論もあろうが,造影剤および空気の量が多いこと.適宜に体位変換をすることなどを考えると,胃の二重造影法はわが国で開発された検査法だといってよかろう.

 ところで,数年前までは,二重造影法というと,仰臥位の二重造影法のことであった.そして,この仰臥位の二重造影法によって,胃の後壁の病変のX線診断は容易になり,表面陥凹型の早期胃癌(Ⅱc)も確実に診断できるようになった.ところが,仰臥位の二重造影法では,通常,胃の前壁の病変は現われないのが欠点である.このことは,胃カメラ検査で前壁のⅡcが発見されるようになるにつれて問題になった.もちろん,腹臥位粘膜法,とくに圧迫法で前壁のⅡcが現わせる.しかし,これらの検査法では全く現わせない症例もあるのである.このような事情のもとに,腹臥位の二重造影法が考案されたのである.二重造影法には,このほかにも,立位,半臥位,第2斜位などの二重造影法もあるが,本文には直接関係はないので省略する.

 私は,昭和40年に,「胃前壁病変のX線診断」6)について報告したことがある.その要旨は,腹臥位二重造影法によって診断した胃前壁のⅡcの症例の紹介である.腹臥位二重造影法を考案するに至ったいきさきは,そこで述べてあるので省略するが,その第1番目の前壁のⅡcは,胃体部のdouble cancerであり,粘膜法や圧迫法では現わせず,腹臥位二重造影法によってはじめて診断できた.そこで,この症例を,昭和39年の学会や早期胃癌研究会で発表したところ,たちまち,胃の前壁のⅡcや潰瘍を腹臥位二重造影法で忠実に現わした症例が,学会や研究会で報告され,雑誌にも発表されるようになった7)8).また,胃前壁のルーチン検査についての検討もされるようになった9)10).このように,腹臥位二重造影法の普及は予想外のスピードであった.X線写真をみれば,そのtechniqueまでもわかってしまうほど,日本のX線診断の水準は高いのである.また,骨身おしまずX線診断に取り組んでいる多数の人々がいるのである.その後,私どもも症例を加えて,胃前壁のⅡcのX線診断について,昭和41年に,東京で開かれた世界内視鏡学会,世界消化器病学会に展示し,また,国際癌会議でも発表した.このときの展示がR. A. Gutmannの目にとまり,彼の近著11)に紹介されるとは,全くおどろきであった.第1症例より,昭和43年1月までの間に,私どもが集めた胃前壁のⅡcは22症例,23病変になる.その大きさは10mm前後のものから60mmくらいのものまであり,部位は胃穹窿部から幽門部にわたる.しかし,症例を集めてみても,胃前壁病変の写し方についての私どもの考え方は,昭和40年当時と余り変っていない.そのため,前の論文の繰り返しになるが,胃前壁病変の写し方について,私どもの集めたⅡcの症例にもとづき,私どもの考えを述べることにする.代表的な3症例を供覧する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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