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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻8号

1968年07月発行

文献概要

今月の主題 進行癌の問題点 綜説

予後のよい進行胃癌

著者: 大森幸夫1

所属機関: 1新潟大学医学部外科学第1講座

ページ範囲:P.971 - P.978

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Ⅰ.はじめに

 予後の良い進行胃癌.これは大変むずかしい問題である.それは進行癌というものは一体どのようなものを言うのか色々と疑問の多い所であり,また,癌の予後に関係する因子は大変複雑であるため,どれを取り挙げて予後を論じたらよいか,これ又判断に苦しむことが多いためである.それで,本論に入るまえに,進行癌というものが今日どのように考えられているか一寸触れることにする.進行癌,これは早期癌に対してつけられた名称である.胃癌ついていえば,癌の浸潤が粘膜ないし粘膜下にとどまるものを早期癌(early carcinoma)とすることは周知のところである.

 したがって進行胃癌(advanced carcinoma)とは,癌の浸潤が固有筋層以上に達したものを総称することになる.しかしながら,癌本来の生物学的な性格から考えれば,このような分類で癌発育の時間的経過を表現することには大変な無理があるように思える.この点はすでに病理学者からしばしば指摘されているところであるが,臨床的な慣用語としてはまた,捨てがたい味があるため,なお広く使用されているものである.これに対して外科領域においては,すでに数年来胃癌の臨床病理学的の取り扱いに関して一定の取り決めをして(外科・病理,胃癌取扱い規約5)),それにしたがって胃癌の問題を論じようという傾向になっている.この胃癌取扱い規約では,いわゆる“早期癌”,“進行癌”なる言葉は一切使用していない.すなわち,早期癌の分類に入るものには“表在癌”という表現を用いている.したがって進行癌は深部浸潤癌ということになるであろう.このように,癌の胃壁内浸潤の程度を,客観的に表現する言葉を用いた方が,癌の臨床病理学的検討には大変合理的であると考える.

 このような根拠から,私は進行癌という言葉は深部浸潤癌という意味に解釈して,話を進めることにする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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