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文献詳細

雑誌文献

胃と腸3巻9号

1968年08月発行

文献概要

今月の主題 消化管の医原性疾患 綜説

日常遭遇する消化管の医原性疾患

著者: 並木正義1

所属機関: 1北海道大学医学部第三内科

ページ範囲:P.1069 - P.1073

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Ⅰ.まえがき

 Iatrogenic disease(医原性疾患)という言葉が1930年代Sir Arthur Hurstによって用いられて以来,いろいろな用語が似たような意味合いで使用されてきた.しかしその概念は入により多少の相違があり,今にしてなお若干の混乱がある.ことにわが国では,これについて注目され出した歴史が浅いためか,この言葉の用い方,含まれる内容に一層の曖昧さがめだつ.

 本来は,平易ないいかたをすれば,主に医者の言動によってひきおこされた不利な患者の状態,すなわち医者,患者間の心理的交互作用によってつくり出された病的状態といった意味合いであるが,その後だんだんと投与した薬剤,手術などの医療行為そのものによってひきおこされる障害もこれに含まれるようになってきた.いわば医原性心理障害と医原性身体障害を含めた広い意味で医原性疾患という言葉を使っている人が最近では多いようである.しかし人によっては,あくまでも医者の言動によって惹起される医師原性のものを医原性疾患の本来のかたちとみるのが妥当であるといっており,わが国の日野などもその見解を主張し,治療により当然おこることが予想されるものは,むしろMoserがいったようにdisease of medical progressとして別に考えるほうが混乱をきたさないであろうとしている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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