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文献詳細

雑誌文献

胃と腸30巻10号

1995年09月発行

今月の主題 微小胃癌

主題

微小胃癌の組織学的種々像と鑑別診断

著者: 西倉健1 渡辺英伸1 加藤法導1 遠藤泰志1 前島威人1 王清芬2

所属機関: 1新潟大学医学部第1病理 2哈爾濱医科大学附属第3病院病理

ページ範囲:P.1295 - P.1307

文献概要

要旨 本研究の目的は分化型微小胃癌の組織像の多様性を明確にし,同癌の組織診断基準を作ること,および組織学的鑑別診断をすることにある.このため,従来のヘマトキシリン・エオジン(H・E)染色所見のほかに,p53蛋白とKi-67免疫染色所見とを組み合わせて,再検を行った.対象は分化型微小胃癌183病変で,このうち101病変(高異型度癌55病変,低異型度癌46病変)に対しp53蛋白およびKi-67免疫染色を施行した.非腫瘍性病変では細胞の異型度に関係なく,p53陽性細胞は散在性に少数,増殖帯部分に限局して出現するのみで,p53陽性率/Ki-67陽性率の比は0.01~0.03であった.p53蛋白過剰発現(陽性細胞が巣状集簇性ないしびまん性に出現)は高異型度癌で63%に,低異型度癌で31%にみられた(両者間でp<0.001).この過剰発現は癌の細胞形質に無関係であった.p53蛋白過剰発現例ではp53陽性率/Ki-67陽性率の比(癌判定の1つのマーカー)が0.87~1.57で,p53陽性細胞が散在性に少数出現する非過剰発現例では0.02~0.06と,後者で有意に低かった.高・低異型度癌の両者とも,それぞれp53蛋白の過剰発現例と非過剰発現例との間で組織像やKi-67染色態度に差はみられなかった.したがって,筆者らの言う“低異型度分化型癌”は癌に相当すると考えられた.腺腫と診断した65病変中1例でのみ,ごく小部分にp53陽性細胞が集簇していた(p53陽性率/Ki-67陽性率=1.19).この例ではp53蛋白の過剰発現部と非過剰発現部との問に,H・E染色上の形態学的差はみられなかった(p53蛋白発現からみると癌に類似).低異型度癌と高異型度腺腫および非腫瘍性幼若上皮との鑑別は可能で,これにはH・E染色による病理組織学的特徴に,p53蛋白およびKi-67免疫染色を応用することが重要であった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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