今月の主題 大腸腺腫の診断と取り扱い
主題
大腸微小腺腫の見つけ出しと取り扱い―経口色素法,拡大電子内視鏡観察を併用して
著者:
三戸岡英樹1
入江一彦1
藤盛孝博2
所属機関:
1神戸海星病院消化器病センター
2神戸大学医学部第2病理
ページ範囲:P.1491 - P.1498
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要旨 経口色素法および拡大電子内視鏡を使用し発見された大腸腺腫について分析し,微小腺腫の見つけ出しと取り扱いについて検討した.経口色素法で全大腸内視鏡検査を行った症例のうち,標準型内視鏡を使用した462例(標準群),拡大内視鏡を使用した449例(拡大群)を対象とした.腫瘍性病変の発見率は標準群で58%,拡大群で61%,50歳以上を対象にすると両群ともに約70%であった.微小腺腫は発見された微小病変の約40%を占めており,全大腸にほぼ均等に分布していたが,微小病変は右側大腸ほど腫瘍性(腺腫)である割合が高かった.無症状,スクリーニング目的で初めて全大腸内視鏡検査(標準型内視鏡)を受けた症例のうち,1親等内に直腸・結腸癌の家族歴を有しない176例を対象に検討すると,大腸腺腫の発生は加齢現象であることが示唆された.経口色素法は大腸微小病変の見つけ出しに有効であり,拡大観察の併用は更にその発見率と質的診断を向上させた.大腸微小腺腫の見つけ出しと取り扱いについては,現時点では,特に平坦・陥凹型に留意しながら,色素法により見つけ出しの向上を図り,拡大観察によりその質的診断を高め,切除すべきかどうかを判定し(判定不能の場合は切除),遺残のない簡便で確実な治療を行うべきである.