今月の主題 表面型大腸癌の発育と経過
主題
表面型起源大腸sm癌の形態学的特徴―粘膜内部残存sm癌を用いた検討
著者:
味岡洋一1
渡辺英伸1
小林正明1
吉田光宏2
斉藤英俊1
佐々木正貴1
所属機関:
1新潟大学医学部第1病理
2東邦大学医学部第3内科
ページ範囲:P.149 - P.164
文献購入ページに移動
要旨 大腸sm癌176病変は,粘膜内部残存癌(106病変,60.2%)と,粘膜内部非残存癌(70病変,39.8%)とに分けられた.粘膜内部残存sm癌で,その残存粘膜内部の厚さが表面型(隆起型)粘膜内腫瘍のそれに相当するものを表面型(隆起型)粘膜内癌起源と規定し,表面型粘膜内癌起源sm癌の肉眼的特徴を検討した.表面型粘膜内癌起源sm癌に特徴的な肉眼所見は,有茎性病変がないことと隆起型病変ではその表面形態が扁平か陥凹局面から成ることであった.また,隆起起始部で粘膜内腫瘍と周辺非腫瘍性粘膜とがなだらかな移行を示すものは,表面型粘膜内癌起源と考えられた.起源粘膜内癌別にみたsm癌の発育様式の検討から,粘膜内部非残存sm癌の中で,大きさ15mm未満の無茎性病変は表面型粘膜内癌起源と考えられた.それらの中でもⅡa型病変は,全例がⅡb・Ⅱc型粘膜内癌を起源とした癌と考えられた。表面型粘膜内癌起源sm癌の残存粘膜内部は,1型起源sm癌に比べ高異型度癌が占める割合が高く,腺腫併存率は有意に低値であった(腺腫併存例の割合が,Ⅱa型粘膜内癌起源癌で22.9%,Ⅱb・Ⅱc型粘膜内癌起源癌で0%).すなわち,表面型粘膜内腫瘍の中でsm浸潤を来すものは(進行癌の初期病変となるものは),de novo発生で低異型度癌から高異型度癌へのprogressionが早期に起こったものと考えられた.