レベルアップ講座 診断困難例から消化管診断学のあり方を問う
胃体下部Ⅲ+Ⅱcの診断のもと手術施行,広いⅡbを伴い追加切除となった1例
著者:
森川正道1
望月福治2
所属機関:
1周東総合病院内科
2仙台市医療センター消化器内科
ページ範囲:P.236 - P.238
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症例 56歳,男性.主訴:ふらつき.1990年6月8日,胃内視鏡検査で体下部後壁にH1stageの潰瘍が認められ,生検でGroupⅣと診断された.6月22日,潰瘍はS1stageとなり,生検ではGroupⅢ,7月25日の再度の生検でもGroupⅢであり,経過観察した.1991年4月,心窩部痛を訴え来院,4月12日の内視鏡検査で体下部後壁にA2stageの潰瘍を認めた.同日施行した拡大内視鏡で辺縁の不整,発赤を認め,噴門側小彎の発赤パターンに乱れがあり(Fig. 1),この部分からの生検でGroupⅤの診断がなされた.これまでの経過も考慮し,Ⅲ+Ⅱc,深達度mと診断した.術前の5月8日の胃X線検査では体下部後壁に縦長楕円形の不整なニッシェがあり,辺縁はほぼ全周にバリウムの抜けを認めた(Fig. 2).幽門側小彎に淡いバリウム斑様の所見があり,Ⅱcの拡がりを疑った.5月10日の内視鏡では,潰瘍の噴門側(Fig. 3a)および幽門側(Fig. 3b)の色素内視鏡像にみられるように,辺縁の不整,島状変化,小彎側への溝状陥凹を認めるが,周囲の粘膜には異常があるように思われなかったので,Ⅲ+Ⅱcとした.5月13日,distal partial gastrectomyが施行された(Fig. 4).手術標本の病理組織所見は潰瘍周辺に広いⅡbを伴った(Fig. 5)Ⅲ+Ⅱc+Ⅱb,深達度mで,poorly differentiated adenocarcinoma,しかも口側断端小彎後壁寄りでow(+)であった.このため6月19日tatal gastrectomyが施行され,残胃の検索では癌組織は認めなかった.