症例
約6年間慢性に経過し家族性に発症した静脈硬化症による虚血性腸病変の1例
著者:
津田政広1
窪田伸三2
中村哲也3
坂口一彦1
魚川裕加1
犬島浩一1
福井広一1
三浦正樹1
小出亮1
由宇芳才1
奥村修一4
藤盛孝博5
前田盛5
入江一彦6
所属機関:
1国立神戸病院内科
2国立神戸病院消化器科
3国立神戸病院研究検査科
4国立神戸病院外科
5神戸大学医学部第2病理
6神戸海星病院消化器病センター
ページ範囲:P.709 - P.714
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要旨 患者は50歳,女性.約6年前から右下腹部痛,嘔気出現.腹部単純X線検査で上行結腸から下行結腸にかけて腸管に沿った線状の石灰化像,注腸透視で上行結腸から横行結腸にかけ半月ひだの消失,管腔の狭小化を認めた.大腸内視鏡検査では同部位で粘膜は粗い網目状に暗青色を呈し,浮腫状で浅い小潰瘍が散在していた.腹部CTで結腸壁の肥厚とその周囲血管壁の石灰化がみられた.以上から静脈硬化症による虚血性腸疾患と診断された.結腸亜全摘術を施行したが,組織学的にも静脈の硬化を認めた.本疾患は非常にまれであり,更に母親も同疾患で手術をしており,家族発症した症例はいまだなく,内視鏡的に経過を追えたこと,術前に診断しえたことから貴重な症例と考え報告した.