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文献詳細

雑誌文献

胃と腸30巻6号

1995年05月発行

文献概要

今月の主題 粘膜下腫瘍の形態を示した胃癌 序説

粘膜下腫瘍の形態を示した胃癌

著者: 吉田茂昭1

所属機関: 1国立がんセンター東病院内科

ページ範囲:P.737 - P.738

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 胃癌は上皮性腫瘍であり,粘膜固有層内から発生し,粘膜の側面方向へ向かって発育する.したがって,粘膜下腫瘍の形態を示すことはまれであり,本来であればどこかに粘膜内病変の存在を示唆する異常所見(側方浸潤による粘膜の破壊像)を有しているはずである.逆に病巣が非癌性粘膜で完全に覆われていれば,むしろ非上皮性腫瘍や転移性腫瘍を考慮すべきと教えられている.しかし,癌はあらゆる形質を発現する可能性を有しており,極論すればどのような形質をもとりうるのである。大切なことは,“まれな形態の癌である”として片づけてしまうのではなく,通常とは異なる形態をとる場合には,通常とは異なる形質の発現として捉え,その特性を探求する姿勢であろうと思われる.

 原発性の上皮性腫瘍でありながら非上皮性腫瘍の形態をとることの説明は,組織発生の場で詳しく論じられるものと思われるが,単純に思い浮かぶのは,胃の扁平上皮癌や類腺癌などのような深部浸潤の優勢な癌の存在である.しかし,これらが粘膜下腫瘍の形態をとることは極めてまれであり,通常は粘膜下膨隆像に決壊した局面を有する腫瘍像としてみられるのである.すなわち,胃癌が粘膜下腫瘍の形態を示すには,深部浸潤した癌細胞そのものが腫瘤像を形成するのではなく,何らかの機転が加わることが必要なのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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