今月の主題 粘膜下腫瘍の形態を示した胃癌
主題
粘膜下腫瘍の形態を示した胃癌の内視鏡診断―典型症例の検討を中心に
著者:
光永篤1
二見佐智子3
鈴木麻子3
元鍾聲3
内田耕司3
根本行仁3
池田郁雄3
中村真一3
村田洋子1
長廻紘12
鈴木茂1
鈴木博孝4
所属機関:
1東京女子医科大学消化器病センター消化器内視鏡科
2現 群馬県立がんセンター東毛病院
3東京女子医科大学消化器病センター消化器内科
4東京女子医科大学消化器病センター消化器外科
ページ範囲:P.769 - P.776
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要旨 1985年から1994年の10年間に当センターで内視鏡的粘膜切除術あるいは外科手術が施行された胃癌(2,786例)のうち,病変の辺縁が“粘膜下腫瘍様”と形容された胃癌16例を検討した.そのうち,癌の粘膜内露出部分が10%以内であるような粘膜下腫瘍の形態を示す胃癌は3例のみであり,内視鏡的に腫瘍全体の形態が粘膜下腫瘍と言えるものは,1989年9月に本誌においてわれわれが報告した1例1)のみであった.したがって,今回の主題のような胃癌が極めてまれであることが確認された.粘膜下腫瘍様とされる胃癌の多くは,粘膜下層以下での癌組織形態が未分化型癌を呈しており(68.8%),粘膜下層以下における組織形態が粘膜下腫瘍様と診断されるうえで重要と考えられた.更に,粘膜下腫瘍様形態を呈するとされる表面型起源広基性大腸sm癌との比較から,粘膜下腫瘍様形態を呈するうえで,癌の発生早期に粘膜筋板を破る必要があり,そのためには,深部浸潤傾向の強い癌が粘膜筋板の薄い箇所に発生する必要があると考えられた.