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文献詳細

雑誌文献

胃と腸30巻6号

1995年05月発行

今月の主題 粘膜下腫瘍の形態を示した胃癌

主題研究

胃リンパ球浸潤性髄様癌の肉眼形態学的特異性

著者: 源利成1 磨伊正義1 太田孝仁1 表和彦1 安本和生1 渡辺騏七郎2

所属機関: 1金沢大学がん研究所外科部 2国立金沢病院研究検査科

ページ範囲:P.799 - P.806

文献概要

要旨 胃リンパ球浸潤性髄様癌(medullary carcinoma with lymphocytic infiltration; MCLI)は,分化度の低い癌細胞の髄様増殖と間質における著明なリンパ球浸潤を特徴とする特異な組織型であり,進行癌であっても極めて良好な術後経過をとることは,本疾患の術前診断や術後経過観察を含めた臨床的取り扱いを考えるうえで重要である.このような観点から本研究では,30例の胃MCLI症例(早期癌7例,進行癌23例)を腫瘍の肉眼型に着目して検討し,その組織形態学的概念と臨床(肉眼)診断との接点について考察した.胃MCLIの典型的肉眼像は,早期癌ではⅡa+Ⅱc型,進行癌ではBorrmann2型に代表される境界明瞭な潰瘍形成性限局型腫瘍であった.このような特徴のほかに,2例の早期癌と10例の進行癌の肉眼所見は分類不能型と判定された.この12例のうち,早期癌2例と進行癌7例の原発腫瘍は,悪性リンパ腫の潰瘍型ないしは決壊型の肉眼所見と類似していた.また3例の進行癌は,粘膜下腫瘍に極めて類似した肉眼所見を呈していた.腫瘍の肉眼型と好発部位,組織学的諸因子,浸潤リンパ球のsubpopulation,リンパ節転移や予後との間には特定の関係は認められなかった.胃MCLI症例は進行癌であっても極めて良好な術後経過を示し,再発死亡した4例はいずれも漿膜に浸潤し,リンパ節転移を伴う高度進行癌であった.胃MCLIの特異的な肉眼像と極めて良好な術後生存率を考慮すると,治療前(術前)診断が本疾患の臨床的取り扱いに際して重要であり,超音波内視鏡検査やjumbo biopsyは有用な補助手段であると考えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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