今月の主題 大腸の悪性リンパ腫
主題
原発性大腸悪性リンパ腫の臨床病理学的検索
著者:
岩下明徳1
竹下盛重2
竹村聡1
宇都宮尚3
飯塚佳彦4
植山敏彦5
八尾隆史3
渕上忠彦4
松坂俊光6
臺丸裕7
恒吉正澄3
菊池昌弘2
八尾恒良8
飯田三雄9
所属機関:
1福岡大学筑紫病院病理
2福岡大学医学部第1病理
3九州大学医学部第2病理
4松山赤十字病院消化器科
5九州大学医学部放射線科
6松山赤十字病院外科
7松山赤十字病院病理
8福岡大学筑紫病院消化器科
9川崎医科大学内科(消化器Ⅱ)
ページ範囲:P.869 - P.886
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要旨 原発性大腸悪性リンパ腫26症例について,臨床病理学的立場から検討した.本腫瘍は肉眼的に一応,潰瘍型13例,隆起型9例,びまん浸潤型4例の3型に分類されたが,多少分類に困難を感じる症例も存在し,肉眼的多彩性を示唆していた。Updated Kiel分類に基づく組織分類ではB細胞性リンパ腫21例中15例が低悪性群,6例が高悪性群と分類され,前者群15例中11例が狭義のMALTリンパ腫と診断された.T細胞性リンパ腫4例はすべて高悪性群に属した.1例はT・B細胞型の決定不能であった.このように組織像も多彩性を示していた.本腫瘍の5年生存率は41.6%と低かったが,Updated Kiel分類による組織型別5年生存率は高悪性群で10.8%,低悪性群で61.6%と後者で有意に良好であった.以上の結果から,本腫瘍は肉眼上も組織学的にも多彩性を示し,予後不良の腫瘍であることが確認された.加えて,Updated Kiel分類は肉眼形態とある程度の相関を示し,かつ予後決定因子となりうることを指摘した.