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文献詳細

雑誌文献

胃と腸30巻8号

1995年07月発行

文献概要

今月の主題 表層拡大型食道表在癌 序説

表層拡大型食道表在癌

著者: 吉田操1

所属機関: 1東京都立駒込病院外科

ページ範囲:P.983 - P.984

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 食道の表層拡大型癌を初めて系統的に取り上げたのは第24回食道疾患研究会(1987年,会長:武藤輝一教授)1)であった.このときには,表層拡大型食道表在癌を“食道粘膜内の癌性変化が連続性に,20mm以上の拡大を示すもの”としている.食道癌においては,固定標本の長軸方向の縮小率が40~50%であると仮定した定義であった2).143症例(m1~2:7例,sm:42例,mp:32例,a1:14例,a2:32例,a3:16例)の集計結果の報告があり,深達度smまでの場合,肉眼型は表在型が多く,mp以深では潰瘍型が主体をなしていた.

 胃癌における表層拡大型症例は,大きさの割りに深達度が浅く,切除後は予後の良いことが報告されていたが3),それと対照的に表層拡大型食道表在癌は,脈管侵襲やリンパ節転移の頻度が高く,予後の不良な点が特徴的であるとされていた.しかし深達度smまでで,表層拡大成分の大きさ20~50mmの症例(m1:1例,m2~3:2例,sm:40例)の5年生存率54%は,当時のリンパ節郭清状態を考慮すると,決して悪くない結果である.これに対して深達度の浅い群(m1:2例,m2~3:2例,sm:2例)では,表層拡大成分が50mm以上に達してもリンパ節転移はなく,再発もみられなかった1).このことは,食道においては粘膜下層癌におけるリンパ節転移頻度が高く,これらの予後不良因子のまれな上皮内癌ならびに粘膜癌が早期癌であると広く考えられている現在,容易に納得できる結果である.食道癌の深達度smは浅くないのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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