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文献詳細

雑誌文献

胃と腸30巻9号

1995年08月発行

今月の主題 胃の平滑筋腫と平滑筋肉腫―新しい視点を求めて

序説

胃の平滑筋腫と平滑筋肉腫―新しい視点を求めて

著者: 磨伊正義1

所属機関: 1金沢大学がん研究所外科

ページ範囲:P.1107 - P.1108

文献概要

 胃の非上皮性腫瘍のうち平滑筋原性腫瘍は約40%を占め,最も頻度の高いものだけに日常臨床上遭遇することが多い1).この平滑筋由来の腫瘍は,その発生部位のいかんにかかわらず,臨床的にも病理形態学的にもまれに良・悪性の鑑別困難な症例が存在する.この平滑筋原性腫瘍の悪性度判定に際しては,腫瘍の大きさ,肉眼的性状に加え,腫瘍細胞密度,細胞異型性,核分裂像の頻度など種々の形態学的指標が用いられてきた.これらの指標の中でも核分裂数が最も重要視され,Stout2)は200倍率の視野から無選択に10視野を検鏡し,その腫瘍組織内の核分裂像の数によって悪性度を4段階に分け,毎視野に1個程度か,2~5視野に1個程度以上の核分裂像のあるものを悪性としている.

 しかし,実際には必ずしもこれらの条件を満たさない平滑筋肉腫症例が報告されている.筆者ら3)4)も核分裂像のほとんどみられない胃平滑筋肉腫症例を経験している.58歳,女性にみられた平滑筋肉腫で,胃角部を中心に発生し,大きさ7×5×3cmで胃内型発育を示していた(Fig. 1).本例は,組織学的に細胞異型はなく,核分裂像も極めて少数で明らかに悪性と判定しえなかった(Fig. 2,3).しかし手術を施行したところ,小網内の胃領域リンパ節(No. 3)の灰白色,充実性の腫瘤を認め(Fig. 4),組織学的に胃腫瘍と同一の形態を示し,小網腫瘍の一部にリンパ節構造が認められた(Fig. 5)ことから,リンパ節転移を伴った低悪性度の胃原発平滑筋肉腫と診断した.このように消化管の平滑筋原性腫瘍においては,従来から強調されてきた核分裂像をはじめとする組織像のみからの悪性度判定には限界があり,個々の症例の臨床像や肉眼所見を含め,総合的に判断すべきであろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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