今月の主題 胃の平滑筋腫と平滑筋肉腫―新しい視点を求めて
主題
経過観察例からみた胃平滑筋腫瘍の良・悪性の鑑別診断―X線を中心に
著者:
市丸壽彦1
渕上忠彦2
八尾恒良1
岩下明徳3
竹中国昭1
古川敬一1
古川尚志1
松井敏幸1
王恒治4
岡田光男4
井廻宏2
飯塚佳彦2
田中伸之介5
中原束6
久保達哉7
所属機関:
1福岡大学筑紫病院消化器科
2松山赤十字病院消化器科
3福岡大学筑紫病院病理
4福岡大学医学部第1内科
5福岡大学医学部第1外科
6九州中央病院内科
7芦屋中央病院内科
ページ範囲:P.1151 - P.1162
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要旨 X線検査による経過観察が6か月以上あり,手術または生検によって病理組織学的診断の得られた胃平滑筋腫瘍22症例23病変(平滑筋腫11病変,平滑筋肉腫9病変,平滑筋芽細胞腫3病変)を対象に形態変化の推移を分析した.結果は23病変中21病変が増大し,2病変が不変であった.経過中潰瘍形成が見られたのは8病変あったが,潰瘍の有無は良・悪性の鑑別の指標にはならなかった.表面性状は初回検査時平滑なもの19病変,結節状のもの4病変で,経過中表面性状が変化したものは1例のみであったが,表面性状も良・悪性の鑑別点にはならなかった.EUS所見でretrospectiveに良・悪性の鑑別を試みたが満足すべき成績は得られなかった.増大群の年齢,腫瘍径(初回および最終),観察期間, doubling time(以下DT)について組織型別に分け検討した.観察期間,DTの2項目で平滑筋腫群(平均観察期間79.1±25.7か月,平均DT51.0±36.8か月)と平滑筋肉腫群(平均観察期間38.2±24.8か月,平均DT15.5±18.1か月)の間に有意差を認めた(p<0.05).またDTが20か月以上のものはすべて良性,18か月未満のものは1例を除きすべて悪性であり,DTは胃平滑筋腫瘍の良・悪性の鑑別に有用と思われた.