今月の主題 胃MALTリンパ腫
主題
胃悪性リンパ腫および類似病変の画像診断―低悪性度リンパ腫(MALTリンパ腫)を中心に
著者:
馬場保昌1
森田秀祐1
増元秀雄1
加来幸生1
武本憲重1
秋浜玄2
太田博俊3
加藤洋4
所属機関:
1癌研究会附属病院内科
2岩手医科大学第1内科
3癌研究会附属病院外科
4癌研究会附属病院病理
ページ範囲:P.41 - P.58
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要旨 (1)病理組織学的に胃原発性悪性リンパ腫と診断された79例について肉眼型と組織型を比較した.腫瘤形成型の大部分は組織学的に高悪性度リンパ腫であり,表層拡大型の多くは低悪性度リンパ腫であった.(2)低悪性度リンパ腫であるMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫の特徴ならびに臨床的位置づけを明確にするために表層拡大型悪性リンパ腫および悪性リンパ腫と鑑別が必要なリンパ腫類似病変,すなわち良・悪性境界領域病変3例,ALH(atypical lymphoid hyperplasia)7例,BLH(benign lymphoid hyperplasia)5例を対象に肉眼所見,X線所見ならびに内視鏡所見を検討した.(a)X線所見:多数ないし密在する大小顆粒状陰影と散在する小陰影斑は良・悪性境界領域病変,MALTリンパ腫,ALHに多く,不整網状陰影は良・悪性境界領域病変,MALTリンパ腫に多く認められた.しかし,組織学的な悪性度との間に有意な関係はみられなかった.(b)内視鏡所見:白色調粘膜の中の発赤斑や易出血所見は各病型に認められ,悪性度の判定指標にはならなかった.敷石状所見は良・悪性境界領域病変とALHに多く見られたが,MALTリンパ腫には40%と少なかった.以上のことから,今のところ各病型は表層拡大型の低悪性度リンパ腫として包括して位置づけるべきで,前述したX線所見や内視鏡所見は表層拡大型の低悪性度リンパ腫に共通した特有な所見の1つと解釈すべきであると思われた.