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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻10号

1996年09月発行

文献概要

Discussion

「腫瘍内にadenomaと癌が共存する場合の表現」(「胃と腸」質問箱.30:1288)に対して

著者: 小池盛雄1

所属機関: 1東京都立駒込病院病理

ページ範囲:P.1266 - P.1266

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 上記の質問に対する解答にはいささか問題があると思われるので,あえて意見を申し述べたい.

 質問者はcancer in adenomaとcancer with adenomaとの違いについての解答を要求している.cancer with adenomaという名称は大腸癌取扱い規約(第4版)におけるadenoma in carcinomaに相当すると考えられるが,後者は癌の一部に腺腫性成分が混在している状態を指している.大腸癌取扱い規約(第5版)においては,この状態はcarcinoma with adenoma componetと命名されており(p29),“腺腫と共存するが,癌成分が腺腫成分より少ないもの”と説明されている.質問者に対してはまず第一にこの間の実態を説明するべきであるにもかかわらず,解答者は,carcinoma with adenoma-like componentという全く一部の病理医のみが用いると思われる新しい名称にすりかえ,自分たちの考え方のみに基づいた説明をしているのは,その考え方の善し悪しは別として,解答としては妥当でないと思われる.質問者はますます混乱したのではあるまいか.大腸癌取扱い規約に基づいた公平かつ全体的な説明をした後に,自分たちの意見を述べるのは結構であるが,読者の質問に対し公共の誌面を利用して自分たちの意見のみを述べるのはいささか問題ではあるまいか.主題論文において自分の主張を発展するのはよいとしても,質問箱の質問に対する解答には公平さが必要であり,私見を述べるにしても最小限にとどめるべきであろう.多くの愛読者を有する「胃と腸」が一方的な意見陳述の場として利用されないためにもあえて苦言を呈した次第である.(一愛読者より)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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