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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻11号

1996年10月発行

追悼

村上先生の“聖域”に想う

著者: 高木國夫1

所属機関: 1林外科病院

ページ範囲:P.1423 - P.1423

文献概要

 1994年12月に白壁彦夫先生,本年9月28日に村上忠重先生が相次いで逝去され,40年近くにわたり,早期胃癌の研究に情熱を注ぎ,研究の陣頭に立たれたお二人を失ったことは,残念でなりません.村上忠重先生は,外科医でありながら,1940年代から1950年代に,早期胃癌,胃潰瘍の病理を研究され,特に初期胃癌の発生点に関する連続切片による研究には,本当に驚嘆したものでした.X線,内視鏡,外科,病理の頑固一徹な面々をまとめて,早期胃癌の研究の基準ならびに目標となった早期胃癌の肉眼分類を確立し,早期胃癌の研究の母体にもなった早期胃癌研究会を主宰し,「胃と腸」の刊行に尽力されたことは,先生と同じ時代に早期胃癌を研究した者にとっては,忘れることができません.

 先生の多くの研究の中で,特に標題に挙げた“聖域”という言葉は,私にとって印象深いものでした.早期胃癌にみる潰瘍病変の悪性サイクルの一面について,早期胃癌の中央部に存在する瘢痕部の非癌性再生粘膜を,当時,ベトナム戦争でアメリカ空軍による北爆で,首都ハノイが聖域として爆撃を免れていたことに関連して,“聖域”と名付けられました(村上忠重.潰瘍瘢痕癌中心部に存在する非癌性再生腺腔について.日病会誌55:229,1966).私も1959年,早期胃癌の病理を検討した際に,潰瘍を伴った症例で潰瘍辺縁に再生粘膜を80.6%(29/36)に認めていましたが,早期胃癌の中央部に非癌粘膜が存在する点はどうしてか疑問視していました.村上先生のご指摘とユニークな命名には深く感銘を受けたことが思い出されます.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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