icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻12号

1996年11月発行

今月の主題 未分化型小胃癌はなぜ少ないか

主題

大きさと深達度からみた未分化型小胃癌の発育・進展

著者: 松田圭二1 遠藤泰志1 渡辺英伸1 西倉健1 味岡洋一1 前島威人1 飯利孝雄1 山野三紀1 人見次郎2 武藤徹一郎3

所属機関: 1新潟大学医学部第1病理 2新潟大学医学部解剖学第3 3東京大学医学部第1外科

ページ範囲:P.1445 - P.1455

文献概要

要旨 未分化型小胃癌はなぜ少ないのか,この点を明らかにするため,早期胃癌1,997個(微小癌188個,小胃癌267個,その他1,542個)と進行癌1,279個を対象として,m癌の大きさ別と癌の深達度別に分化型癌,未分化型癌の比率を検討した.m癌では,5mm以下の大きさで純粋分化型癌が90%,純粋未分化型癌が10%であった.m癌の大きさの増大とともに,未分化型癌の頻度に変動はなかったが,分化型癌の減少とその未分化型化が生じた.未分化型化の率は5<x≦10mmで3.4%,10mm台で7.4%,20mm台で11.4%,30mm台で35.8%となった.sm以深浸潤癌でも,深部浸潤するにつれ純粋分化型癌の割合は減少し,分化型癌の未分化型化の割合は増加した.この未分化型化は,同じ大きさのm癌に比べ,sm癌で有意に高かった.sm癌での未分化型化は粘膜内部分で発生していたものが94.5%,粘膜下部分で発生したものが5.5%であった.分化型癌の未分化型化は胃型形質癌で76.5%(13/17)と高く,腸型形質癌では22.7%(17/75)であった(ρ<0.01).未分化型化に純粋分化型癌の発生部位や細胞異型度は無関係であった.p53蛋白発現,c-erbB-2発現,K-ras変異や両組織型癌の分布から,分化型癌内の未分化型癌出現は前者の未分化型化と考えられた.以上,進行癌で未分化型癌(未分化型優勢癌を含む)の比率が増加するのは,純粋未分化型癌そのものの頻度が増加するのではなく,純粋分化型癌が粘膜内で増大するのに比例して分化型癌の未分化型化が高率に生じ,この未分化型癌がsm以深浸潤部の主組織型を占めるために,未分化型癌の割合が増加するためと考えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら