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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻12号

1996年11月発行

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書評「機能を中心とした図説組組織学 第3版」 フリーアクセス

著者: 内山安男1

所属機関: 1大阪大学医学部解剖学第1講座

ページ範囲:P.1456 - P.1456

文献概要

 本書は,「Wheater's Functional Histology―A Text and Color Atlas」(3rd ed)の訳書である.私たちは日常,論文を読むときに要約と図表を中心に目を通すことでその内容を読み取ることができる.当然,重要ならば熟読することになるが,この読み方で困ることは少ない.本書の第1の特徴は,組織学の主たるところを適切な図とその説明で済ませている点である.学生が実習室で鏡検するかたわら,その理解を深めるのに最適である.私たちが,講義室や実習室で要点を説明する手法と全く同様に図説が進められている.第2の特徴は,簡潔なレジュメにある.図説に入る前に,要点が簡潔に記されている.本書の名称に“機能を中心とした”との形容詞が付けられている.各器官,組織の機能を簡潔に説明し,その機能がいかなる構造で裏づけられているかを述べている.そして詳細な説明は図説でなされている.また,訳者も述べているごとく,適切な人体構造学的な説明もなされてもいるので,各器官の位置づけを理解するのに役立つ.第3の特徴は,現在の細胞生物学的な理解をポイントを絞り簡潔にまとめ,適切な電顕写真を配置している点にある.各論に相当する各器官,組織の細胞機能を理解するに十分である.

 機能を無視した形態はないし,形態は必ず機能を反映しているとは,古くから言われている言である.おそらく,この種の成書は,それぞれある意味で独立して進歩してきた形態学と機能学という学問が,特に,近年の目覚ましい進歩のおかげで,切っても切れない関係にあることを暗黙のうちに了解している現況を反映した結果とも言えよう.なぜなら,本書の多くの図は,昔からの図と変わらないはずである.しかし,近年の生理学,生化学,分子生物学の進歩はこれらの図中にある構造を説明することができるまで進歩してきた.もちろん,形態学的にも物質のレベルまで構造を解析できるようになってきたこともその関係を融合させるのに役立ってはいる.それゆえ,本当の意味で時期に合った“形容詞”と言えよう.前述したごとく,近年の分子生物学の進歩は目覚ましいものがある.この進歩の結果,機能のわからない多くの蛋白質が同定されるようになった.遺伝子工学の進歩は,これらの遺伝子の過剰発現や発現抑制によって,その蛋白質の機能解析をできるようになった.この解析の主役は形態学にあることは周知の事実である.それゆえ,本書のような図を中心としたテキストはその図の提示が適切であればあるほどますます重要度を増す.実習室での学生の手助けのみならず,レジデント,病理医など,医学の実践に入られた初学者にも手助けになると思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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