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編集後記
著者: 細井董三
所属機関:
ページ範囲:P.1540 - P.1540
文献購入ページに移動 内視鏡治療の普及に伴い,その適応拡大が検討されている中で,未分化型癌に関しては適応とされる微小病変の臨床診断例が依然として少ないためにEMR症例数はほとんど伸びていない.そうした現状が長南の論文に示されている.本誌ではこれまでに4回ほど微小・小胃癌の特集を組んでいるが,どの施設の成績をみても胃癌全体では分化型と未分化型の比率にほとんど差がないのに微小・小胃癌になるとなぜか未分化型の割合は20%以下と極端に低率になっている.そこで本号ではその理由をあらためて問うことにしたわけである.執筆者はそれぞれの視点から興味深い分析を加えている.臨床の側から,渕上,大山は未分化型の微小・小胃癌が少ない主な理由として,癌の組織発生の点からみても50歳以上の癌年齢の胃では胃固有腺粘膜の退縮により未分化型癌が発生しにくい条件に変化していることに加えて,5mm以下の病変では約50%が肉眼的に識別不能なⅡb型で,しかも発生部位がC領域からM領域の胃底腺粘膜に好発するため臨床的に発見が難しいことを挙げている.西俣は未分化型癌の発生様式の特徴から30mm以上の病変に比べて微小病変が少ない理由を論じている.一方,病理の石黒,松田は純粋な未分化型癌は元来,発生頻度が分化型に比べて低く,胃癌全体で分化型と未分化型がほぼ同率になるのは分化型のうちの胃型腺管形成性癌(石黒)あるいは胃型形質癌(松田)が発育進展の過程で未分化型化するためであろうと推論している.そして,松田によればこの未分化型化は,5~10mmの病変でも既に3.4%認められるという.以上のような様々な角度からの分析により,読者にも小さな未分化型癌が少ない理由を理解し,納得していただけたのではあるまいか.
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