今月の主題 大腸腫瘍の自然史
主題
X線学的逆追跡からみた大腸癌の発育経過―PG癌とNPG癌の初発病変の形態
著者:
松井敏幸1
八尾建史1
八尾恒良1
岩下明徳2
櫻井俊弘1
竹中国昭1
松村雅人1
古川尚志1
津田純郎1
帆足俊男2
古川敬一2
青柳邦彦3
吉村龍司3
畠山定宗4
本村明4
所属機関:
1福岡大学筑紫病院消化器科
2福岡大学筑紫病院病理
3九州大学医学部第2内科
4佐田病院
ページ範囲:P.1567 - P.1582
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要旨 進行癌の大多数を占める2型癌が表面陥凹型起源か否かを検討するため,逆追跡例を用いて進行癌の初期像の分析を試みた.対象は初回X線像が早期癌と推定された45病変.その初回X線像は,表面陥凹型(Ⅱc)11病変,表面隆起型(Ⅱa)11病変,隆起型(EL,Ⅰp,Ⅰsp,Ⅰs)23病変であった.最終時の切除標本の病理像から早期癌15病変,mp癌10病変(PG7病変vsNPG3病変)とss以深癌20病変(PG10病変vsNPG10病変)に分け,それぞれの初回X線像と発育形式とを対比した.その結果,早期癌では病理学的なNPG癌の初回X線像はⅡcで,PG癌のそれはⅡaとELであった.またPG進行癌の初回X線像はEL・Ⅱaであった.しかし,病理学的にmp-NPG癌と診断された病変はELとⅡcから発育・進展し,ss以深-NPG癌はEL・Ⅱaから発育・進展したものが多かった.病理学的なPGとNPGの判定は早期癌に限定されるべきである.進行癌では初回PGと推定される病変が,NPGへと無視できない頻度で変化した.逆追跡例からみると,2型進行癌は隆起型・表面隆起型病変から発育・進展するものが多いと考えられる.