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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻3号

1996年02月発行

文献概要

特集 図説 形態用語の使い方・使われ方 第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語 b.X線・内視鏡所見用語

non-lifting sign

著者: 工藤進英1 樫田博史1

所属機関: 1秋田赤十字病院胃腸センター

ページ範囲:P.319 - P.319

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 表面型大腸腫瘍に対して最近,内視鏡的粘膜切除術(EMR)が主として行われている.腺腫や粘膜内癌の場合は生理食塩水(生食水)を注入すると病変が周囲正常粘膜と共に持ち上げられ,切除が容易となるが,進行癌や粘膜下層大量浸潤癌(sm massive)の場合は,周囲正常粘膜のみが持ち上がり,病変は浮き上がらないことが多い.後者のような場合を,non-lifting sign陽性と言う.これは癌が筋層に浸潤したり,粘膜下層に,いわゆるdesmoplastic reactionを来すために病変が固定され,また,生食水が浸透しないことによるとされている.病変が持ち上がらなければEMRが困難になるばかりでなく,このような場合は断端陽性になる可能性が高いので,内視鏡的治療の適応とはならない.したがって,このサインは早期大腸癌の深達度診断および治療方針決定のうえで重要である.ただし,最初から進行癌やsm massiveを疑うときは,わざわざ生食水を注入することはない.一方,粘膜内病変でも,比較的大きい場合は1か所からの生食水注入では全体が持ち上がらないことがあり,また,過去に生検や生食水注入の既往があると,線維化のためにnon-lifting signが偽陽性に出ることがあるので慎重に判断することが必要である.この用語の使用上の注意点としては,生食水注入により病変が持ち上がる場合,原著どおりに記載するならば,negative non-lifting signと言い,lifting sign(+)とは言わないことである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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