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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻3号

1996年02月発行

文献概要

特集 図説 形態用語の使い方・使われ方 第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語 b.X線・内視鏡所見用語

区域性腸炎(segmental enteritis)

著者: 鈴木麻子1 長廻紘2

所属機関: 1東京女子医科大学消化器病センター 2群馬県立がんセンター

ページ範囲:P.347 - P.347

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 区域性大腸炎とは,炎症部の肛側・口側両端に,正常粘膜のみられる大腸の炎症性疾患の総称であり,独立した疾患名ではない.いかなる炎症においても小腸を含めれば口側には必ず正常部があるので具体的には肛門側に正常部の存在するものを指す.区域性大腸炎の鑑別診断には肛門側に正常部があることがわかればよく,肛門側に正常部がなく直腸下端から連続性に炎症のある潰瘍性大腸炎(以下UC)以外の大部分の大腸炎がこれに含まれる.1か所のみに区域性に炎症のある急性の腸炎(虚血性腸炎など)と,スキップして複数部位に病変の存在するCrohn病(以下CD)とに大別される.急性区域性大腸炎の大半は原因が存在し,それを取り除き適切な治療を行うことで軽快する.しかし慢性の腸炎では原因がいまだ不明で完全な治癒に至らず再燃緩解を繰り返す.

 UCは区域性でないことを大きな特徴とするが,一見区域性に見えるものも少なからず経験する.真の区域性UCの有無については意見が分かれている.すなわち区域性イコールUCではないという立場と,病変部を除いて他の点では全くUCと同じ病変が確かにあり,そういうものはUCとするという立場がある.一見,区域性に見えるUCは単に病期が区域別に異なるにすぎないのでUCとすることには何の問題もない.生検を行って,腺管の配列異常や分岐,Paneth細胞出現など再生粘膜所見を得ることや,組織学的に粘膜炎症の残存を認めることなどで正常粘膜と見える部に治った,もしくはごく軽症の病変の有無を証明する.病変が存在した場合は区域性腸炎ではなく,直腸は緩解しているものの,それより口側結腸にのみ炎症が残っているものである.区域型は全経過において区域性のままとは限らない.また,再燃,緩解を繰り返すことから,CDと鑑別が難しいものがまれならずあり,経過を観察しないと診断がつかない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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