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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻3号

1996年02月発行

文献概要

特集 図説 形態用語の使い方・使われ方 第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語 c.病理・病変用語

異形成(dysplasia)

著者: 大倉康男1

所属機関: 1東京都がん検診センター

ページ範囲:P.412 - P.412

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 “dysplasia”のdys-は英語でabnormal,difficultを,-plasiaはto formを意味し,形成異常を示す言葉である.異形成と訳されるが,dysplasiaとそのままに用いられることのほうが一般的である.ほぼ同様な意味に用いられる言葉として“atypia”(異型性)があるが,それはただ非定型であることを表すものであり,“dysplasia”が非定型な発育(atypical development)を表すことと違いがある.すなわち,正常なものと異なるものを経験した場合,異型性があると認識し,そのようなものができることを異形成という.

 dysplasiaは食道,胃,大腸などの消化管,子宮頸部などで癌と診断するには異型度が十分でない病変を示すが,組織異型度を表す言葉としても用いられている.疾患と異型度という次元の違うものを同じ表現で行うことから混乱がある.dysplasiaという言葉の持つ本来の意味からすれば,癌とは言えない異型度の疾患概念として捉えられるべきである.組織所見の異型性を示す表現としてはatypiaが適当である.したがって,これまでmoderate dysplasiaとしていた病変は,adenoma with moderate dysplasiaではなく,dysplasia with moderate atypiaと表されるべきである.言葉は使用者の間で共通の理解が得られるのであれば,どのような言葉を用いようとも問題はないのであるが,パターン認識される組織所見の異型度を単に表現する意味においては,様々な推測を含み,誤解を招きかねない用語は不適切と言える.そのことから,日本では消化管においては異型度を示す表現としてatypiaが用いられるように変わりつつあるが,世界的な認識との間に混乱がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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