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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻3号

1996年02月発行

文献概要

特集 図説 形態用語の使い方・使われ方 第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語 c.病理・病変用語

異型性(atypia)

著者: 大倉康男1

所属機関: 1東京都がん検診センター

ページ範囲:P.413 - P.413

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 異型とは,あるものに関してそれが示す一般的な形態とは異なっていることであり,異型性とは,異型の性質ないし性格を示す言葉である.一方,atypiaとは,“atypia”すなわち“not-type”であることから,非定型を表す言葉であり,異型性と訳されている.病理組織学的には,腫瘍細胞ないし腫瘍組織の形態が由来した正常細胞ないし組織のそれと比較して異なることを表すが,消化管においてはTable 1のような所見が挙げられている.それらの異型所見の正常組織からのかけ離れの程度,すなわち異型性の強さの程度が異型度である.異型度は正常からのかけ離れの程度を長さで置き換えることにより,無数の異型度を実数線分上並べることができることから,連続体である(Fig. 1).

 組織標本には様々な異型所見が種々の異型度で組み合わされて認められるが,組織診断はそれらの所見を認識し,既に経験的に体得され,診断づけられている異型性の物差しを用いて判定することである.すなわち,その過程は異型の認識であり,広い意味でのパターン認識である.その認識の方法は個々の研究者によって異なることから,物差しの目盛に差がみられることになる.パターン認識が共通の領域では問題がないが,異なる場合には臨床病理学的に大きな問題となる.パターン認識能の限界である.そのような問題を避ける意図から,癌組織診断基準を異型組織の浸潤所見におく傾向が世界的にはある.しかし,腫瘍は浸潤によって初めて癌となるのではなく,粘膜内から発生するものである.診断を兼ねた内視鏡的治療が多くなりつつあるが,生検検査を含め採取される標本の主体は粘膜部分である.早期診断・発見を行うためには粘膜内組織の異型度を判定するための共通した基準の確立が必要である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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