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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻3号

1996年02月発行

文献概要

特集 図説 形態用語の使い方・使われ方 第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語 c.病理・病変用語

過誤腫,分離腫(hamartoma,choristoma)

著者: 小池盛雄1

所属機関: 1東京都立駒込病院病理科

ページ範囲:P.415 - P.415

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 便宜的に良性腫瘍として扱われることがあるが,真の新生物ではなく,組織異常ないし組織奇形と言われる軽度の組織構成の異常により腫瘍状を呈するものを意味する.過誤腫は組織構成の量的配合異常で,構成する個々の要素は正常組織を構成する成分と全く同一であるが,各成分の割合が正常とは異なり,腫瘍状を呈するものである.これに対し,胎生期に細胞群ないし組織の一部が正常組織から離断して異常な部位に出現し,かつ腫瘍状を呈するものを分離腫と称する.組織奇形と腫瘍発生との関係が論じられ,この両者を基盤として明らかな腫瘍性増殖を示すようになると過誤芽腫(hamartoblastoma),分離芽腫(choristoblastoma)と呼ばれる.消化管に発生する過誤腫・分離腫は種々あるが,最も代表的なものはPeutz-Jeghers症候群で皮膚・粘膜の色素沈着と胃・小腸・大腸にわたるポリープ形成を特徴とし,常染色体優性遺伝をする.消化管の種々の場所に起こる異所膵は粘膜下腫瘍として認識され分離腫に相当する.25%前後は胃に発生する.

 近年注目を集めているものにCowden病(multiple hartoma syndrome)がある.常染色体優性遺伝を示し,内,中,外胚葉の過誤腫性病変が多発する.一般に10歳代~20歳代で発症し,皮膚・粘膜に多発性病変を持つ,皮膚では顔面のTrichilemmoma,acral keratosis,口腔粘膜の乳頭腫,女性では甲状腺腺腫,両側性乳腺腫瘍などをしばしば合併する.甲状腺では癌化の傾向が強く,乳癌は90%に発生するとされ,家族集積性を示す.近年消化管の多発性ポリープが注目され,現在ではCowden病の徴候の1つと考えられている.食道では上皮の肥厚による小さな隆起が,胃では腺窩上皮の局所的過形成,体部腺の軽度囊状の拡張,Peutz-Jeghers型のポリープなどが報告されている.大腸ではS~Rに多発し,内視鏡的には過形成性ポリープに類似した像を呈する.ポリープの形態は様々であるが,粘膜固有層間質の拡大と腺窩の軽度の過形成性変化が中心で間質に種々の炎症性細胞浸潤の存在がある.粘膜筋板からの平滑筋線維が中心を形成しているとの報告もある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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