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特集 図説 形態用語の使い方・使われ方 第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語 c.病理・病変用語
癌遺伝子,癌抑制遺伝子(oncogene,tumor suppresor gene)
著者: 落合淳志1 下田忠和2
所属機関: 1国立がんセンター研究所病理部 2国立がんセンター中央病院臨床検査部
ページ範囲:P.417 - P.417
文献購入ページに移動癌遺伝子とは細胞を癌化し,その状態を維持する蛋白質を産生する遺伝子のことである.本来染色体に存在する細胞遺伝子(癌原遺伝子)が量的,質的に変化して発癌性を獲得したものを示すが,広義には細胞遺伝子由来でないものを含む.例えばSV40ウイルスのT抗原や,アデノウイルスのE1Aなどの腫瘍ウイルス由来の遺伝
子を含んでいる.
癌遺伝子は,1969年レトロウイルスの1つであるRous sarcoma virusの細胞癌化に関する変異株が単離され,その株から癌遺伝子の存在が推定された.その後,1982年にヒト膀胱癌の培養細胞からH-ras遺伝子が単離されて以来,50種類を超える癌遺伝子が単離されている.癌遺伝子は動物種には限定されず,多くの脊椎動物,更にある種の癌遺伝子では酵母に至るまで広く保存されており,細胞の増殖や分化に重要な役割を果たしていると考えられている.Table1に現在までに知られている代表的な癌遺伝子を示す.多くの癌遺伝子はその遺伝子配列の共通性,また,その機能に基づいて,①細胞増殖因子群,②受容体型チロシンキナーゼ群,③非受容体型チロシンキナーゼ群,④核蛋白質群,⑤低分子G蛋白質群(ras群),⑥セリンスレオニンキナーゼ群,などに分類されている.これらの癌遺伝子は,染色体の点座,点突然変異および遺伝子増幅といった機構により活性化されることが報告されている.
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