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特集 図説 形態用語の使い方・使われ方 第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語 c.病理・病変用語
若年性ポリープ,ポリポーシス(juvenile polyp,juvenile polyposis)
著者: 武藤徹一郎1
所属機関: 1東京大学第1外科
ページ範囲:P.421 - P.421
文献購入ページに移動胞状に拡張した腺管と豊富な間質によって構成されており,表層上皮が剥離していることが多いために,小さくても発赤が著しくほとんどの患者は下血を主訴とする(Fig. 1,2).幼児,小児が好発年齢であるが,約1/3は成人にも発生する.好発部位は直腸,直腸S状部であり,大多数は単発である.autoamputationによって自然に脱落することもある.過誤腫性ポリープの範疇に属しており,癌とは関係のない病変であるが,まれに腺腫性腺管の混在が認められることがある.
若年性ポリポーシスは若年性ポリープが多発する遺伝性疾患である(Fig. 3)。最初は大腸腺腫症の中に含められていたが,組織所見の特徴に基づいて1964年からは独立した疾患として認識されるようになった.発生する大腸ポリープの大多数は若年性ポリープ同様に間質に富み異型を呈さないが,しばしば腺腫性腺管の混在が認められ,その一部に癌が認められることもある.したがって本症に合併する大腸癌はポリープの一部に発生した腺腫を母地にして生ずるものと考えられている,ポリープの数は腺腫症ほど多くはないが,ポリープは大腸のみならず胃にも発生し,種々の先天性奇形を合併することもある.わが国には1993年までに12家系12人が,世界では153例の報告しかない比較的まれな疾患である.腺腫症の家系内に発生した例もあり,癌化の問題も含めて腺腫症に類似の疾患と考えられている.腺腫症と同様に癌の高危険群に属する疾患として取り扱うべきである.
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