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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻3号

1996年02月発行

文献概要

特集 図説 形態用語の使い方・使われ方 第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語 c.病理・病変用語

全層性炎症(transmural inflammation)

著者: 岩下明徳1

所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理

ページ範囲:P.424 - P.424

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 消化管壁の全層,すなわち粘膜,粘膜下層,固有筋層,漿膜(外膜)のすべての層にわたる炎症を全層性炎症と言う.この言葉は,炎症性腸疾患inflammatory bowel disease(IBD)と総称されるCrohn病(特に大腸Crohn病)と潰瘍性大腸炎の病理組織像の差異を表現する際によく使用される.例えば,Crohn病の炎症反応はリンパ球集簇を主とする全層性炎症を特徴とし,潰瘍性大腸炎のそれは,急性電撃型を除き,粘膜と粘膜下層に限局する表層性炎症(superficial inflammation)を特徴とするごとくである.

 大腸Crohn病は上述したように全層性炎症を示すので全層性大腸炎(transmural colitis)とも呼ばれる.なお,全層性炎症のみられる他の腸疾患として,腸結核,単純性潰瘍,腸型Behçet病,虚血性腸炎などが挙げられる.一方,主として粘膜と粘膜下層に限局する表層性炎症を示す腸疾患には非特異性多発性小腸潰瘍症がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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