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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻7号

1996年06月発行

今月の主題 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)

主題

HNPCCの概念と日本の現状

著者: 馬塲正三1 川上和彦1 中村穣志1

所属機関: 1浜松医科大学医学部第2外科

ページ範囲:P.823 - P.830

文献概要

要旨 HNPCC(hereditary nonpolyposis colorectal cancer)はLynch症候群あるいは家族性大腸癌とも言われている.第1例がWarthin(1913年)により報告され,後の後継者により更に追跡され集積された.その家系調査の解析の結果,Lynchにより優性遺伝性疾患であることが証明された.しかし,家族性大腸腺腫症のように多数の腺腫を発生するようなはっきりした形質発現がなく,その診断は家族構成員を含めての注意深い病歴の聴取によっていた.1994年,その原因遺伝子がクローニングされ本疾患の概念が明確となった.すなわち,酵母や大腸菌で既に知られているミスマッチ修復遺伝子mut HLS系のhuman homologueとしてhMLH2,hMLH1,hPMS1,hPMS2が相次いで発見され,これらが遺伝子群としてDNAミスマッチの修復を行い,染色体のstabilityの維持に役立っていることが判明した.これらの遺伝子に変異が起こるとミスマッチが修復されず遺伝子の変異が起こる確率が100~1,000倍増加すると考えられる.したがって第1癌が手術により治癒しても第2癌の発生のリスクが高いことも理解される.Lynch Ⅰ型は家系内に大腸癌のみ多発するもので,特に右側大腸癌が好発しsitespecific cancerとも言える.Lynch Ⅱ型は大腸癌のほかに他臓器の癌も発生するもので,わが国では第2癌として男性は胃癌,女性では子宮体部癌が多いことが第43回大腸癌研究会の調査で判明した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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