今月の主題 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)
主題
遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の臨床および画像上の特徴
著者:
牛尾恭輔1
石川勉1
宮川国久1
飯沼元1
牟田浩実1
杉原健一2
森谷冝晧2
園田隆彦3
垣添忠生4
下田忠和5
所属機関:
1国立がんセンター中央病院放射線診断部
2国立がんセンター中央病院外科
3国立がんセンター中央病院婦人科
4国立がんセンター中央病院泌尿器科
5国立がんセンター中央病院臨床検査部病理
ページ範囲:P.831 - P.840
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要旨 HNPCCでは大腸癌のほかに胃癌,子宮体癌,卵巣癌,泌尿器系癌などが好発する.これらの病変を伴った症例について画像を中心に報告した.次に,10年以上にわたる定期的な家族歴の聴取で,腫瘍の発生の推移を示し,世代を経るにつれて,悪性腫瘍の出現が若年化する傾向があることを示した.HNPCCの診断には,家族歴の定期的な調査が必要である.更に,HNPCCでの大腸癌の発育・進展を遡及的に検討し,①初期像は無茎隆起(Ⅰs型),表面隆起型(Ⅱa型),表面隆起陥凹型(Ⅱa+Ⅱc型)が多い,②進行癌へ推移した病変のdoubling timeはHNPCCが12.0か月,通常の大腸癌が11.1か月で,両者に統計学的な差は認められなかった.以上からHNPCCにおける大腸病変の自然史は通常の大腸癌と同じであろうと推定された.