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今月の主題 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC) 主題
HNPCCと大腸腺腫
著者: 渡辺聡明1 武藤徹一郎1
所属機関: 1東京大学医学部第1外科
ページ範囲:P.841 - P.849
文献購入ページに移動要旨 HNPCCの大腸腺腫は古くから大腸癌のprecursorとして重要であると考えられており,通常腺腫よりも悪性度が高いという報告もある.今回われわれは当科で手術施行したHNPCC42症例の大腸腺腫について検討した.対照は第一度近親者に癌家族歴がない大腸癌症例(501例)とした.両群とも大腸癌切除標本に認められた腺腫について検討した.平均年齢,男女比,腺腫の大きさ,異型度は両群問で差はなかった.腺腫頻度,腺腫多発頻度ともにHNPCC群が有意に高かった(45.3% vs. 23.4%:p<0.01)(28.6%. vs. 8.0%:p<0.01).腺腫が右側大腸に分布する比率は,HNPCCのほうが有意に高かった(60.0% vs. 32.4%:p<0.01).flat adenomaの頻度はHNPCC群が高い傾向を示したが有意差は認められなかった(17.5% vs. 7.3%:NS).以上の結果から,HNPCCの腺腫の特微として,対照より頻度が高く,右側大腸に高頻度で分布するが傾向が認められた.しかし,悪性度に関しては,通常腺腫と有意差はないと考えられた.
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